第15話 とある少女達の悲劇
とある場所にて子供達が複数人集まっている所に、ある人物がやってきた。
「あ!先生!」
「はい、おはようございます」
「「「「「おはようございます」」」」」
先生と呼ばれる女性は笑顔で挨拶をすると子供達も笑顔で一斉に挨拶をする。
「今日はいいお知らせを伝えますね」
「何々!」「もしかしてご馳走かな!」「何かな何かな!」「楽しみだねお姉ちゃん!」「うん、そうだね」
子供達は期待に満ちた目でキラキラと先生の方を見て何かな何かなと見ていると、入り口の扉から黒いハットを被った老人と、白いローブを着ている若い男性2人がその老人の後ろに現れた。
「今日は子供達の中から引き取ってくれる方を連れてきました。この方は〜〜王国の貴族様で、貴族ランクBのお方です」
すると子供達がおー!と言う声と共に更にキラキラと目を光らせる。
「どうも初めまして、私は〜〜王国の貴族ランクBのウィルス=クローンと申します。ウィルスとお呼びください」
ウィルス=クローンと名乗る老人はニコリと子供達に笑顔を向けると拍手が鳴り響いた。
「はーい、ではウィルスさんの所に行きたい人〜」
「「「「「はーい!」」」」」
「ふふふ、皆んな元気があっていいですね」
「子供達は全員ランクEかE+です。ですが私にとってランクは関係ありません。皆んなとてもいい子達です」
「それはそれは」
子供達全員の右手の甲にはランクEの刻印が刻まれており、一瞬見ただけでも直ぐに分かるようになっている。
老人はニコニコしながら辺りを見渡し、早速誰にしようか決める。
さてさて、どの子にしようか。
「おや?あの2人は姉妹なのですか?」
「はい、あの子達は血の繋がった姉妹ですよ」
「そうですか。ではあの子達に決めます」
「分かりました。そこの2人!ウィルスさんの所に行くことが決定しました!おめでとう!」
ウィルスが選んだのは空色の髪と黄色の瞳の少女と幼女の2人。服は2人とも茶色の布一枚で覆われており、靴は草履で足の指が所々傷付いていた。そんな2人をウィルスは笑顔で手を差し伸べる。
「今日から2人は私の家族です。宜しくお願いしますね?」
「ほ、本当に私達で良いのですか?」
「お姉ちゃんお姉ちゃん!ユイナ達が選ばれたね!おじさんお願いします!」
自分の事をユイナと言う幼女は空色の髪、黄色の瞳、ぱっちりとした大きな目、年齢は6歳。身長平均より少し小さく笑顔が可愛い。いつも元気で周りを幸せにしてくれる存在だと一眼見ても分かる。そんなユイナは笑顔でウィルスの元に行ってお辞儀をする。
「こ、こらユイナ!おじさんじゃなくてウィルスさんでしょ!」
「ハハハ!元気があって良いではないですか。おじさんで構わないよユイナちゃん」
と言ったがウィルスは眉毛をピクリと動かしていた事を少女は見逃さなかった。
「その本当にすみません!ユイナ!これから家族になる人なんだからウィルスさんと言いなさいね?」
「はーい!ウィルスさんお願いします!」
「はい、宜しく。おっと君の名前を聞いていなかったね?お名前を聞いても?」
「は、はい!私はユイカです!」
ユイカと言う少女も空色の髪、黄色の瞳で、ユイナとは違い少し垂れ目で優しい目つき、年齢は12歳。身長はユイナと同じく平均より少し小さく落ち着いた雰囲気でしっかりとしている。
「ユイカちゃんだね。妹さんと名前が似ているけど何か意味でもあるのかな?」
「いえ…私達の母親だった人が名前を付けるのめんどくさいと言って付けられたみたいです…」
ユイカは暗くなり、チラッと自分の妹の方を見る。
「私達は母親に捨てられました。まだ私が小さい時にはここにいて数年後に私の母親が妹をここに置いていったのです。Eランクだからと言う理由で…」
「そう…でしたか。安心して下さい。私は貴方達2人を捨てませんよ」
するとウィルスは笑顔で2人の頭を撫でて安心をさせる。ユイナは頭を撫でられえへへと嬉しそうにニコニコとして、ユイカは少し恥ずかしそうにしながらウィルスの顔を見る。
「さて、私は2人を引き取る為に書類を書いてきますので護衛の2人と外で待ってて下さい」
「分かりましたウィルスさん」
「はーい!」
ウィルスは書類を書く為に先生の元に行き、2人は護衛の男性と一緒に外に出る。
「楽しみだねお姉ちゃん!」
「う、うんそうだね」
「どうかしたの?」
「ううん!何でもないよ!そうだね楽しみだね!」
「うん!」
ユイカは護衛の人達を見て少し違和感を覚えたがユイナが楽しそうにしているのを見て考えるのを辞めた。そして数分後ウィルスは書類を書き終わったのか先生と子供達と一緒に外に出てきた。
「では行きましょう」
「「「「「またねー!」」」」
「幸せになるのよ2人とも!」
「先生今まで育ててくれてありがとうございます!そして皆んなもまたね!」
「またね先生ー!皆んなー!」
外に止めてあった豪華な馬車に2人は乗り込んで最後にウィルスは先生達に頭を下げて中に入っていった。
御者の人が馬に指示をすると、ガタガタと馬車は動き出して離れて行く。
「皆んなとの別れは寂しいかな?」
「はい…ですがこれらはウィルスさんと過ごせる事を楽しみにしています。私もお手伝いを頑張りますので宜しくお願いします」
「ユイナも!」
「はは、お手伝いをしなくても宜しいですよ。なんたって…ゴホン。使用人がやってくれるので2人はのんびりとお過ごしください」
一瞬何かを言いかけたウィルスはわざと咳をして誤魔化しニコリとする。
「そろそろ着きますウィルス様」
「分かりました」
「わー!大きな家!」
「こ、こら!窓から顔を出すと危ないよ!」
そろそろ到着すると言う事でウキウキしていたユイナは待ちきれないとばかりに窓を開けて顔を出しながら目の前の豪邸に興奮していた。そんなユイナを見て危ないと注意するが自分も目の前の豪邸を見て目を奪われた。
「ハハハ、楽しそうで何よりです。私もこの後楽しみにしている事がありますので同じですね」
「ウィルスさんと同じ!何々!」
「それは秘密ですよ」
「えー!ユイナ気になる気になる!」
窓から顔を引っ込め、ウィルスに向けてキラキラとした目で見つめるユイナに苦笑いしながらもお楽しみと言って会話を終わられた。
馬車が家に到着すると外からウィルスの使用人が扉を開けて待機していた。
「お帰りなさいませウィルス様」
「ああ、ただいま。今日は私達の家族となる人を連れてきた。例の物をよろし頼むぞ」
「かしこまりました」
先に降りたウィルスは使用人と話て2人を歓迎する様に伝えると家に向かって歩いて行った。
「とう!おー!凄い!凄いよウィルスさん!お花がとても綺麗!」
「ちょとユイナ!余りはしゃいじゃダメよ!」
元気よくぴょんと馬車から降りたユイナは目の前に咲く色とりどりな花に夢中になっていた。
「いいのですよ。子供は元気が1番です」
「本当にすいません…」
「ユイカさんもそう緊張せず楽にしてください。これからは家族になるのですから」
「は、はい!それと…私にさんは入りません…」
「私がさんと言いたいのですよ。それだけじゃダメでしょうか?」
「あ、いえ!文句を言ったわけでは…」
「ハハハ分かっておりますよ。ではそろそろ中に入ってゆっくりしましょう」
ユイナはキャキャと喜びながら走り回り、それを見ていたユイカは何かやらかさないか冷や冷やしながら見守っていた。
「ではユイカ様ユイナ様お風呂の準備が出来ておりますのでどうぞお入りください」
「えっ!?」
「お姉ちゃん!お風呂だよお風呂!初めて入るね!」
「えっあ、うん。その…私達本当にお風呂に入ってよろしいのですか?」
「勿論でございます」
お風呂の脱衣所でユイナはバッ!と自分が着ていた茶色の服を脱いでお風呂に走って行った。それを追いかける様に慌ててユイカも脱いで小走りで中に入る。
「わー!お姉ちゃんお風呂広いね!」
「もうユイナお風呂では走ったらダメって習ったでしょ!」
「えへへ、ごめんなさ〜い!」
ユイカははぁ〜とため息を吐いたが確かに目の前にあるお風呂は大きく、天井も突き抜けており綺麗な青空が見えていた。
「ねぇーねぇー!入ってもいいよね!」
「ダメだよユイナ。まずはお風呂の温度になれる為に手でお湯をすくって慣れさせるの。それから入るんだよ?そうしないと体がビックリしちゃうからね」
「はーい!」
入ろうとしていたユイナに体を慣らす様に言うと早速言われた通りにバシャバシャ!として風呂の中に入る。
「気持ちい〜」
「そうだねユイナ。絶対私達じゃ入れないと思っていたお風呂がウィルスさんのお陰で入る事ができたんだよ。諦めなくて良かった…」
両手でお湯を救って眺めるユイカを不思議そうにユイナは見つめていたが再びキャッキャッとはしゃぎ始めてた。
それから数分風呂を満喫した2人は脱衣所に行くとそこに待機していたメイド服を着たメイドさんが貴族が着る豪華な子供用ドレスを持って待っていた。
「お拭きになられましたらこちらを着てください」
「お姉ちゃん!あの服フリフリだよ!可愛い!」
「そ、そうだね。あの…メイドさん私達本当に着ても良いのですか?」
「はい、ウィルス様にこれを渡す様言われましたので着ていただけたらウィルス様も喜ばれます。ではウィルス様がお待ちですので着替えたら他のメイドを待機させてありますので案内してもらって下さい」
表情を一切変えずに2人にドレスを渡した後脱衣所から出ていった。その時ユイカは何故かメイドの手が少し震えている事に気づき、少し疑問に思った。
あのメイドさん表現を一切変えていなかったけど手が震えていました。何かがおかしいと思っていましたがそれが何なのか分かりません。
「お姉ちゃん?」
「うん?どうかしたのユイナ?」
「ずっとボーとしてたけどどうしたの?」
「あ、ううん。何でもないよ。着替えて早くウィルスさんの所に行こっか」
「うん!」
おかしいのは分かっています。だけど私は何があっても妹を守ると誓いました。私は産まれて直ぐに捨てられ母親の顔は知りません。ユイナも同じです。ユイナは私が6歳の時にあそこに来ました。産まれて間もないのに私と同様扉の前に置かれていたそうです。更には私と妹が血が繋がってると聞いてショックを受けました。それは母親が自分の子供を簡単に捨てられる人なんだと。理由は分かっています。私達2人はこの世界にいらない存在だからです。とても悲しいです…。その時から自分はどうなってもいい、ユイナだけでも幸せにしてやりたいと心から思えました。
「ではご案内します」
「はいお願いします」
「お願いします!」
脱衣所から出ると先程のメイドが言った通り他のメイドが待機しており2人をウィルスの元に案内する。ほんの数分歩き案内された場所に着くと一つの豪華な扉の前に到着した。
「ウィルス様失礼します」
「し、失礼します!」
「失礼します!」
「はい、どうぞ」
メイドがドアノックして一言言うと2人も同じ様に言うと扉の向こうから返事が返ってきた。そして扉を開けて中に入る。
「いい匂いするー!」
「本当だね」
「では私は失礼します」
「案内ありがとうございます」
「ありがとうお姉さん!」
「はい…」
顔の変化は無かったがやはり先程のメイドと同様このメイドも何処かおかしかった。チラッとユイカは戻っていくメイドの顔を見ると変化がなかった表情が崩れ暗くなっていた。
「ささ、今日は2人を歓迎して豪華な食事用意しました。遠慮なく食べて下さいね」
「わーい!」
目の前の大きな長テーブルの上には肉や魚を使った料理が色々と置いてあり、どれも美味しそうでとてもいい匂いか部屋中に充満していた。ユイナは嬉しそうに用意してあった椅子に座りキラキラと料理を見ていた。
「ユイカさんも遠慮せずに食べて下さいね」
「は、はいありがとうございます…」
ユイカもお腹が空いていた為、ユイナの隣に座り料理を見る。
「ではいただきましょう」
「どれから食べようかな!」
「ユイナゆっくりと食べるんだよ?喉に詰まったりしたら大変だから」
「はーい!」
ユイカはユイナが食べたいと言った料理を取り分けてあげて自分も料理を取り分ける。
「う〜ん!美味しい!」
「お、美味しい…」
2人は取り分けた料理を食べた瞬間、ユイナは満面な笑みで幸せそうな顔をしており、ユイカは初めて食べる美味しい料理に感動をしていた。
「喜んでくれたみたいで良かったです。私は歳が歳なので余り食べれません。ですので2人で食べてしまって構いませんよ」
「えっ!いいのウィルスさん!」
「そ、そう言うわけには…」
「ユイカさん大丈夫ですよ。私は歳で余り食べれません。ここにある料理は2人の為に作ってもらいました。残してしまったら作ってもらった人には申し訳がないのです。どうか遠慮せずに食べて下さい」
ニコッとしながら優しい口調で遠慮しなくていいよと言うウィルスは、待機していたメイドを呼んで2人にある物を渡させる。
「これはな〜に?」
「こちらは貴重な黄金のリンゴから作られた果実のジュースでございます」
「えっ!滅多に取れないと言う黄金のリンゴですか!そ、そんな高価な飲み物はいただけないです!」
「お姉ちゃん黄金のリンゴってな〜に?」
目の前に出されたのは小さいコップに入った黄金のリンゴと呼ばれる果実から作られた輝く飲み物だった。
「ユイナこれはね!何十年に一度しか実がならないと言う黄金のリンゴなの!これを食べた人はあらゆる難病が治るとも言われている貴重な果実と言われているんだよ!」
「詳しいのですねユイカさんは。そうですこれは数十年に一度しかならない貴重な果実です。これを食べたり飲んだりしたらあらゆる難病でも治せると言われております。ですがそれは嘘です」
「えっ!そうなんですか!?」
「はい、この黄金のリンゴはそんな効果はありません。大袈裟に伝わってしまったみたいですが本来の効果は再生です」
「さ、再生ですか!?」
ウィルスが本当の効果を言うとユイカは目を見開き驚いた表情をしていた。
「そ、そんな貴重な果実をわ、私達が飲んでもいいのですか!…あ、お、大声を出してしまいすいません…」
「いいのですよ、驚かれるのも無理はございませんからね。本来の使い道は腕や足が無い人に使うのですがジュースとしても美味しく頂けます。特に再生の魔法を使える人物が数人しかいないとされているのでこの果実1つに付く値段は相当ですね。値段は言えませんがどうぞ遠慮せず飲んで下さい」
「ゴクリ…」
ユイカは目の前に置いてある黄金に光るジュースをマジマジと見てゴクリと唾を飲み込んだ。
こ、このジュースは相当な価値です。本当に私達が飲んでもいい代物なのでしょうか。
「お姉ちゃんお姉ちゃん!このジュースとっても美味しいよ!」
そんな事を考えていると隣で黄金のジュースを飲んだユイナは目をキラキラとさせて興奮しながらユイカに飲んでみて!と何度も言う。
「お、落ち着いてユイナ。私も飲むから」
「早く早く!」
ゴクッ
「ん!?これは…」
お、美味しい!物凄く美味しいです!甘さも程良く飲みやすいです。まさかこんなにも美味しい飲み物が生きている中で飲めるなんて…。
「グスゥ…」
「お姉ちゃん?」
「あ、ううん何でもないの…ただ私達この先幸せになれるんだと思うと涙が…」
「お姉ちゃん!私ずっとお姉ちゃんのそばにいるからね!」
「ありがとうユイナ」
ユイナの頭を撫でてありがとうと言うとえへへと年相応の笑みで二パァ!と嬉しそうにする。2人の嬉しそうな光景を見ていたウィルスは口をニヤリとしてメイドを呼び、耳元でコソッと何かを命令するとそのメイドは頭を下げで扉から出ていった。
「すいませんウィルスさん。みっともない光景を見せてしまって」
「いえいえ、2人が幸せそうにしているのを見て私も幸せです」
「ふわぁ〜…お姉ちゃんユイナ眠くなってきた」
「ここで寝たらダメよ…ふわぁ〜…私も眠くなってきちゃったみたい」
突然睡魔に襲われた2人は小さく欠伸をして目をパチクリさせていると扉から先程のメイドがやってきた。
「ユイカ様ユイナ様寝室にご案内致しますので着いてきて下さい」
「うん…」
「すいませんありがとうございます…」
2人はウィルスに頭を下げてお礼を言った後フラフラとして寝ぼけながらもメイドの後ろに着いていくがどんどん睡魔に襲われ、歩いている途中でバタリと倒れてしまった。
「本当にすいませんユイカ様ユイナ様。ウィルス様のご命令には逆らえないのです。私も命が掛かっております。」
そう言うとメイドは2人を抱っこして寝室にではなく何処か別の場所に移動を始めるのだった。
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「準備は出来たのか」
「はい、全ての準備を終えました。後はウィルス様が行かれるだけです」
「そうかそうか。今回も私が楽しめる様にセットしてくれたんだろうな?」
「はい」
「ならよい。さて、今夜も存分とショーを楽しむとするか」
高級なソファーに座りながら足を組んでいるウィルスは、今朝の様な優しい笑顔ではなく、不気味な笑みを浮かべながら今夜を楽しみにしていた。
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ポチャ…ポチャ…ポチャ…
「う、う〜ん…ここ…は?」
水が落ちる音で目を覚ましたユイカは目を擦りながら起きるとそこは牢屋らしき場所で、手と足には太い鎖で縛られており身動きが取れなかった。
「やっぱり…私達は騙されてたんだ…」
悔しい気持ちと複雑な気持ちが同時に湧き出て何とも言えない状態だったが、はぁっ!となり辺りを見渡すとそこには妹のユイナが自分と同じように太い鎖で縛られていた。
「ユイナ!ユイナ起きて!」
「う…う〜ん…お姉ちゃん?えっ!何これ!ユイナ達何かされるの!痛いの嫌だ!」
「落ち着いてユイナ大丈夫だから。お姉ちゃんが着いてるからね!」
「ハハハ、お姉ちゃんが着いている?何を馬鹿な事を言っているのですか?」
何とかユイナの所に近づいて泣きそうになっていたユイナを大丈夫と何度も繰り返して安心させていると!右からウィルスと白いローブを着た男と斧を持った男が1人現れた。
「ウィルスさん?何でこんな酷い事を…?」
「酷い事?クク…ハハハハハハ!笑えますね!実に笑えます。では聞きます。君はランクEの人達が何処に引き取られその後どうなったか知っていますか?」
「そ、それは皆んな幸せに…」
「本当にそう思っているのですか?ですが残念です!本当はみ〜んな今の状況と同じです!」
「う、嘘です!手紙には皆んな幸せだって!」
「何を言っているのですか?そんなの全部嘘でに決まってますよ。引き取られた子供達は君達に顔を出したことがありますか?死んだ後だっていくらでも誤魔化せるのですよ」
「そ、そんな…」
本当の事実を知ったユイカはショックでガタガタと体が震えていたが、ユイナを守る様にしていた。
ユイナだけは…ユイナだけは絶対に…。
「あ〜いいですよ!その顔が見たかった!人が恐怖のドン底に落とされた時の顔が!もっと!もっとです!」
「うっ…お姉ちゃんウィルスさん怖い…」
「うるさい!私の名前を呼ぶなゴミが!何度も何度も何度も!ずっと我慢していましたが限界だ!やれ!」
ビキッと青筋を浮かべながら怒鳴るウィルスは斧を持っている男に命令をするとユイカとユイナの方に歩いていく。
「そいつの後ろにいるゴミの腕を斬り落とせ。あの貴重なリンゴを食べさせたんだ。一度斬られても数時間は何度も再生する」
「や、やめてください!ユイナだけには手を出さないでください!お願いします!私が!私が変わりになりますので!」
「そのうるさいゴミを静かにさせろ!」
「ウグゥ!?」
ユイカがユイナの目の前に立ち、涙を浮かべなか必死にお願いをするが、ウィルスはその光景を見てイライラが増幅し、男に静かにさせる様に言う。すると男は斧の刃が無い部分で思いっきりユイカのお腹を殴って吹っ飛ばす。お腹を殴られ吹っ飛ばされたユイカは意識が朦朧としていたが何とか耐え、痛みを我慢しながらお腹を抑え、引きずる様にしながらユイナの元まで進んでいた。
「手加減はしたな?」
「勿論です」
「ならいいです。折角の姉妹です。面白いものが見れると期待していますよ」
「はい」
ウィルスはチラッとユイカの方を見てニヤリとすると、ユイカの手を足でガン!として進むのを止める。
「グゥ!」
「大人しくそこで見てて下さい。今から素晴らしいショーが始まるのですから」
「や……めで……ぐぅ……だ…はぁ…はぁ…さ…い」
力を振り絞ってウィルスの足を踏まれてない方の手で掴んだユイナは何とか絶え絶えながらも止めるが…。
「汚い手で私の足に触れるな!」
「ウッ…」
ユイカの手を思いっきり振り解き、手を踏んでいた方の足でもうその手を一度踏みつける。
「さぁ!やっちゃってください!スパッと!」
「お、お姉ちゃん助けて!ユイナ痛いのやだ!」
「ゆ……い…な」
ユイナは泣きながら暴れているが鎖で縛られており、白いローブの男2人が押さえつけられている
「執行!」
ウィルスが男に命令をすると斧を振り上げユイナの両腕目掛けて振り下ろす。
そして…。
ザクッ!
「アガッ!…」
両腕が斬られ床にぼとりと落ちた瞬間、大量の血飛沫が舞い、斬られた痛みに耐えきれなかったのか気絶をしてしまった。
「……あ…ああ!」
「ハハハハハハ!いい!実にいい!その絶望をした顔こそ私が求めていた顔!どうですか!大事な家族が傷つけられた感想は!」
「……も…う……やめ…で…ぐ……だ…さい」
「何を言っていますかまだまだこれからですよ!ほら見て下さい再生してきましたよ。では執行!」
「ヒギッ!?」
ユイナの両腕が光と共に綺麗に治った瞬間男に再度命令をすると斧を振り上げ斬り落とす。すると気絶をしていたユイナが苦しそうにしながらもまた気絶をする。そんな光景が数時間続き…。
「執行!」
「……」
「あれ?もう再生しませんね。まーいいです。反応も無くなりましたし次は貴方…『し、侵入者が現れました!』何ですか今はお楽しみ中ですよ」
慌てた様子で現れた警備兵がウィルスの元に行こうとした瞬間…。
「グハァ!」
「いや〜本当にこんな所があるとは」
「誰だお前は」
警備兵を焼き払い現れたのは、短い茶髪、鋭い目つき、きらりと光る黄色の瞳、少し鍛えられた筋肉、その腕には蛇のマークが彫られており、服装は軽装備で動きやすさ重視。耳には厳ついピアスが付けられていた。そんな男はポケットに手を突っ込んで辺りを見渡していた。
「俺か?俺は別に名乗る様なものじゃねー」
「なら何をしにきたんだ」
「強いて言うなら金が無くなったから貰いにきた!」
「「ウガァーーー!!」」
と、笑いながら言う謎の男は目線をローブの男2人に移すとニヤリとする。すると先程の男同様炎の渦に巻き込まれ、丸焦げになってしまった。
「い、一体何が…」
「丸焼きにしただけだけど?それより金が欲しいな〜そうだ!この家丸ごとおれが貰ってやってもいいぞ?感謝しな!」
「おい!こいつを殺せ!」
「了解ですウィルス様」
斧を持った男は謎の男に向かって走り出し、斧を振り下ろす…が。
「何処を斬っているのかな?俺は後ろだぜ!」
「グァーー!!」
謎の男は斧を持った男の背後を取り、肩に手を置くと一瞬にして炎の渦が包み込み丸焦げになる。
ば、馬鹿な!
「それでさ〜お前がここの主人だよな?」
「ヒィッ!?」
「そう怯えるなってな?金になる物を教えてくれれば死なずに済むよ?ほらほら」
「ほ、本当ですね!で、でしたら此方の鍵をお渡しします!この鍵は2階にある保管庫の鍵です!そこには宝石などを溜め込んだ物が沢山あります!ですのでどうか命だけは!」
「どうもぉ!」
「ガハァ!?なん…で…」
謎の男はウィルスから2階の保管庫の鍵を受け取ると同時に何処からか取り出した短剣をウィルスのお腹に突き刺す。
「なんでって金が欲しかったのもそうだが偶々この屋敷に討伐対象がいたから殺しただけだって、もう死んでるか。さて、金を調達しに行くとするか」
謎の男は鍵を入手できてご機嫌がいいのか鼻歌を歌いながら階段を上がって行った。
あ、あの人は一体…ううん、そんな事は今はいいのです。今は…。
「ウッ…ユイナ…ハァハァ…誰か助け…」
ユイカは痛みに耐えながら起き上がりフラフラとユイナの元まで歩いて行くが段々と意識が遠のいていき付く寸前に倒れてしまった。
その後ウィルスの屋敷に訪れた人が悲鳴を上げて兵士達を呼んだ。その兵士達は屋敷の中に入り、家中を探索していると金品など高価な物が無くなっている事に気づき襲撃にあったに違いないと確信して上に報告するよう1人の兵士に指示をした。そうしていると地下に繋がる階段を見つけた兵士が報告をしてきたのでその場所まで行くと焦げた匂いや鉄の匂いが充満しており、目の前には燃やされた人や血を流しているウィルスを見つけ目を丸くする。そしてチラッと牢屋を見ると1人は両手が無い少女、もう1人は両手が無い少女の近くに倒れ込んでいる少女が見えた。ゴクリと唾を呑んで兵士達は周りを警戒しながらも最初にウィルスが生きているかを確認するが冷たくなっており死んでいた。次に牢屋にいた2人の少女の生存を確認する為近づくと倒れている少女の右手の甲を見てなるほどと納得する。次に2人の脈を確認すると生きている事が分かりニヤリとした。そしてその兵士達は処理後直ぐに奴隷商に歩いて行き2人を売ってお金に変えた。




