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三年間の眠りから目覚めたので、あなたの新しい家庭ぶっ壊します  作者: 花


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なんで邪魔ばかりするの?

 もう! 邪魔よ! 退いてちょうだい!」


 それにしても、レイモンド様は昔からそうだ。こうして態と邪魔ばかりしてくる。


 イザベラのところへ行こうと、リーンに変装用のメイクをお願いしようとしたら「別の用事がある」と追い払われ、リーンは屋敷からいなくなってしまった。


 アビナ様の屋敷へ戻ろうとすれば、なぜか侯爵家には馬車が一台も残っていない。


 仕方なくサラ達とお茶でもして気を紛らわせようとしたら――なぜか庭の東屋で待っていたはずのサラの代わりに、レイモンド様が平然と椅子に座っていたのだ。


「リーンを追い払ったのも、馬車が出払っていたのも……まさか、全部あなたの仕業なの!?」


 繋がった違和感に、わたくしは彼を指差して詰問した。


「さあな。だが、お前が目覚めて早々に、また妙な企みをして動き回ろうとしていると聞いてね。少しおとなしくしてもらうために手を回させてもらった」


「な……っ! 余計なお世話よ! わたくしにはやらなきゃいけない大事なことが――」


「イザベラだろ?」


 あっけらかんと言い放たれた名前に、思わず言葉が詰まる。


「どうして……それを……」


「お前の考えることくらい、お見通しだ。三年眠りこけていた病み上がりの身体で、丸腰で乗り込む気だったのか? 相変わらずお前は、後先を考えない猪だな」


「猪って何よ、猪って! わたくしは今、ものすごく真剣に……っ」


「だからだ」


 レイモンド様は呆れたような溜息をつくと、掴んでいたわたくしの腕をふっと緩め、そのまま大きな手でわたくしの頭をぽん、と撫でた。


「……本当に無事でよかった。お前が目を覚まさない間、どれだけ周りが、そして俺が、生きた心地がしなかったか……」


 乱暴に髪を崩されたわけではない。壊れ物でも扱うような、優しく温かな手つき。


 ――けれど、いつも意地悪ばかり言う彼の口から漏れた気持ちの悪い言葉に、全身にゾワゾワッと鳥肌が立った。


「レイモンド……様……?」


「お前が動くなら、俺も付き合う。……二度と、俺の目の届かないところで勝手に倒れさせるわけにはいかないからな」


 少しだけ真面目な顔で見つめられ、さらに気持ち悪くて吐きそうになった。


 わたくしはバッと彼の胸を押し返した。


「い、今度は何を企んでいるのかしら!? わたくし一人で、あの二人をギャフンと言わせるつもりなんですの! イザベラのことも……ルーカスのことも、わたくしとはもう無関係で、どうでもよろしくてよ!」


「一人で何ができる? 馬車もない、変装もできない、それにお前は策略とか陰謀とか一番苦手だろう? お前は真っ直ぐぶつかるしか能がないんだからな」


「うぐっ……」


 悔しいけれど、ぐうの音も出ない正論だった。


「ほら、座れ。リーンにお前用に淹れさせたハーブティーだ。まずはそれを飲んで落ち着け。ルーカスをやっつけるための『作戦会議』は、それからだ」


 レイモンド様は自分のお茶を優雅に口に運ぶと、ニヤリといつもの意地悪な笑みを浮かべて向かいの席を示した。


 まったく……本当に、どこまでもペースを乱される憎たらしい人!


 わたくしは盛大な溜息をつきながら、大人しく彼の向かいの席へと腰を下ろしたのだった。


「……で? 『作戦会議』なんて大層なことをおっしゃるけれど、レイモンド様に何ができるというの?」


 目の前に置かれたハーブティーを一口含み、わたくしは眉をひそめて彼を睨みつけた。ほのかにカモミールの香りがして、苛立った心がほんの少しだけ落ち着くのが悔しい。


「何ができる、か。ずいぶんと舐められたものだな」


 レイモンド様は脚を組み、肘をテーブルについて不敵に口角を上げた。


「お前が三年間眠りこくっている間に、あの二人が何をしてきたか知っているか?」


「……三人で仲良く、こっそり隠れて幸せに過ごしていたのではありませんの?」


「そうだ。そしてお前はもう、社交界では『いなかった者』とされているんだ」


「そんなこと知っているわ。わたくしが目覚める前に離婚は成立して、あの二人は再婚。今は幸せに暮らしているのだもの。イザベラだって、今やカーラ様のことを母親として慕っているわ」


「お前が一人で乗り込んだところで、幸せに暮らしている三人に何ができると言うんだ? だから俺が手を貸すと言っている」


「でも……どうしてあなたがそこまで? あなたには関係ないはずでしょう?」


 素直な疑問を投げかけると、レイモンド様は一瞬だけ表情を曇らせ、すぐにいつもの意地悪な笑みに戻した。


「言ったろう? 俺を退屈させない相手がいなくなると困る、とね。それに――お前が惨めに泣き寝入りする姿なんて、俺の趣味じゃない」


「な……! 泣き寝入りなんてしませんわ!」


「だったら乗れ、俺の提案に」


 彼は懐から一枚の豪華な招待状を取り出し、テーブルの上でわたくしに向かって滑らせた。


「これは……今週末の、王城での夜会……?」


「ああ。ルーカスとカーラも、当然顔を出す。……病み上がりのイライザ嬢、復讐の第一歩として、俺のパートナーとしてあの場に乗り込む覚覚悟はあるか?」


「あなたがパートナーにならなくても、わたくしの元にはエリザベスから直々に招待状が届いているわ!……それに、他国のあなたまで夜会に参加するつもりなの? あなた、いったい何様なんですの?」


 他国の貴族が王家主催の夜会に招かれるなんて、よほどの高位貴族のはずだ。


 けれど、彼がわたくしの領地に遊びに来ていたとき、そんな豪華な装いはしていなかった。立ち振る舞いや衣服から貴族であることは確かだとしても、とてもそれほどの立場には見えなかったのだから――。


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