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第9話 最強対最強②

鼓膜を叩く激しい金属音と衝撃波で、レオはハッと意識を取り戻した。

 痛覚が鈍麻し、死の淵にあったはずの身体。だが、ゆっくりと上体を起こすと、驚くべきことにあれほどボロボロに引き裂かれていた肉体が、自力で動ける程度にまで回復していた。

「よかった。これでもう大丈夫です」

 すぐ傍から、安堵したような女性の声が聞こえた。見れば、見知らぬ女性がレオに寄り添うように膝をついている。

「あんたが、助けてくれたのか……?」

「私の名前はマリア。あなたに何かあったら助けるよう、ボスに言われてたの」

 ズドォォォォンッ!!

 再び近くで凄まじい轟音が鳴り響いた。驚いて音のする方へ視線を向けたレオは、信じがたい光景に息を呑んだ。

 そこには、全身傷だらけで血に染まったウィリアムと、彼を圧倒する特位聖騎士ヴァン・フォンシオンの姿があった。

「黒の騎士団のリーダーといえども、所詮はこの程度か」

 ヴァンが、膝をつくウィリアムを見下ろして冷酷に言い放つ。

 ウィリアムは息も絶え絶えになりながらも、漆黒の大剣を杖にしてゆっくりと立ち上がった。

「……ッ!」

 ウィリアムが残された魔力を練り上げ、莫大な突風を生み出す。ヴァンへと襲い掛かったその風は、ヴァンの後方にあった強固な石壁を紙くずのように粉砕するほどの異常な風速だった。

 だが――奥義によって極限まで物理強化されたヴァンの肉体には、その暴風すらも全く意味を成さない。

「芸がない。これで終わりだ!」

 ヴァンが無造作に剣を一振りするだけで、暴風は呆気なくかき消された。

 そのまま神速の踏み込みで距離を詰め、ヴァンの凶刃がウィリアムの胴体を真っ二つに両断する。

 ――しかし。

「なんだ、これは……」

 剣を振り抜いたヴァンが、思わず怪訝な声を漏らす。肉を断つ手応えが、まるでなかったのだ。両断されたはずのウィリアムの身体は、まるで蜃気楼のようにブレていた。

「俺の『奥義(プルニーヴ)』をお前に見せよう」

 静かなウィリアムの声が、四方八方から響き渡る。

「この力は、使いたくなかった。なぜなら……強大すぎて、このアジトそのものを破壊しかねないからだ。俺の奥義は、俺自身が『革命(風)』そのものとなり、お前を敗北へと導く……」

 突如、祭壇の部屋全体に狂ったような暴風が吹き荒れ、ウィリアムの身体を包み込んでいく。

「『奥義(プルニーヴ)風神死那屠部(ふうじんしなとべ)』」

 風が晴れた後、そこに立っていたウィリアムの姿は完全に変貌していた。大気を纏い、実体すら曖昧になったその威容は、まさに神話に語られる『風神』そのもの。

「ハッ……それが貴様の奥義(プルニーヴ)か! だが、どんな風を吹かせようとも、圧倒的な力で叩き潰してやる!」

 ヴァンが歓喜の笑みを浮かべ、再び大剣を構えた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

ついにウィリアムの奥義が発動し、物理攻撃を無効化する『風神』へと姿を変えました。

極限まで物理攻撃力を高めたヴァンの凶刃は、果たして実体を持たない風を斬ることができるのか……!?

次回、黒の騎士団トップと特位聖騎士による最高峰の死闘が、ついに決着します。

ここまで読んで「熱い!」「続きが気になる!」と少しでも思っていただけましたら、ページ下部の【☆☆☆】を【★★★】にして応援していただけると、執筆の最大のモチベーションになります!

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