■ 第78話 「深夜ラジオ」
現実世界。
深夜。
地方ラジオ局。
パーソナリティの女性が、小さなブースで喋っていた。
静かな番組。
リスナー投稿中心。
最近、妙なメールが増えている。
『黒い夢』
『夜の違和感』
『名前を書くと落ち着く』
最初は都市伝説だと思っていた。
だが。
あまりにも多い。
女性は台本を見る。
少し迷う。
その後、マイクへ向かった。
「最近、変な夢の投稿が増えてますね」
軽い雑談として流す。
重くしない。
怖がらせない。
それでも。
確かに存在している。
その時。
ブースのガラスが一瞬だけ黒く揺れる。
沈黙。
女性の喉が止まる。
見えてしまった。
“目”。
薄い。
遠い。
だが。
確かにいる。
女性は深呼吸する。
最近、掲示板で読んだ。
“慌てるな”。
“確認しろ”。
彼女はラジオネームを読む。
「えー、ラジオネーム『忘れない人』さん」
声を出す。
言葉を固定する。
その瞬間。
ガラスの黒が少し薄くなる。
女性の顔が変わる。
「……え」
だが。
放送は止めない。
いつも通り続ける。
静かな深夜ラジオ。
普通の日常。
それでも。
世界は、少しずつ繋がり始めていた。
――観測記録
観測層:第3層
対象:現実世界
状態:局地共有拡散段階
更新:
深夜放送内共有反応を確認
変化:
一般メディア接触増加傾向
評価:
人類側局地適応 継続中
補足:
“声による確認”が安定へ作用している可能性あり
追加記録:
放送空間内侵食反応を確認
結論:
現実側共有範囲 微拡大中
(次話へ)




