■ 第77話 「海沿いの小村」
北欧世界。
海沿いの小村。
人口は少ない。
漁と簡単な交易で生きている場所。
最近、監視対象へ追加された。
理由は単純。
黒海が近い。
村の外れ。
神兵達が小さな石柱を設置している。
簡易固定柱。
神名刻印済み。
以前なら、大都市優先だった。
今は違う。
“小さい場所”ほど危険になり始めている。
村人の老人が柱を見る。
「こんなもんで変わるのか?」
神兵が苦笑する。
「正直、分かりません」
「でも、無いよりマシです」
老人は海を見る。
黒い。
遠い。
だが。
確実に近づいている。
その時。
浜辺の子供が空を見上げる。
「また黒い鳥」
全員が止まる。
沈黙。
空。
黒い鳥型侵食個体が旋回している。
以前より高い位置。
近づいてこない。
ただ。
村を見ている。
神兵の一人が小さく神名確認を始める。
「トール様」
「北欧神話軍」
周囲の神兵も続く。
村人達も、最近は真似するようになっていた。
名前。
土地。
家族。
確認する。
忘れないために。
黒い鳥が少し高度を上げる。
数秒後。
海側へ去っていった。
老人が小さく息を吐く。
「……最近、本当に見るだけだな」
神兵は柱を打ち込む。
静かな音。
派手な戦いはない。
それでも。
村は今日も、“維持”されていた。
――観測記録
観測層:第3層
対象:北欧沿岸小村
状態:局地維持段階
更新:
小規模村落防衛を確認
変化:
一般村人の固定行動定着傾向
評価:
局地安定率 微上昇
補足:
侵食個体は現在高距離観測傾向
追加記録:
鳥型旋回反応を確認
結論:
小規模居住区維持継続中
(次話へ)




