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■ 第74話 「駅前の雑談」

現実世界。


日本。


夕方。


駅前の喫茶店。


会社帰りの客で少し混んでいた。


久世 恒一は窓際へ座っている。


ノート。


スマホ。


コーヒー。


最近はここで掲示板を見ることが増えた。


その時。


隣席の会話が聞こえる。


「最近、変な夢見ない?」


若い会社員だった。


友人らしき男が苦笑する。


「黒いやつ?」


久世の手が止まる。


以前なら。


こんな会話はなかった。


今は違う。


小さい。


だが。


少しずつ共有され始めている。


会社員が続ける。


「ネットで見たんだけどさ」


「名前書くとマシになるらしい」


友人が笑う。


「宗教じゃん」


「でも昨日やったら寝れた」


久世は静かにコーヒーを飲む。


掲示板は外へ漏れ始めていた。


まだ小さい。


都市伝説レベル。


それでも。


“対処法”が広がっている。


その時。


窓ガラスが一瞬だけ黒く揺れる。


沈黙。


久世は気づく。


だが。


以前ほど緊張しない。


窓の外。


黒い人影が立っている。


目がない。


輪郭が曖昧。


それでも。


最近は、“近づいてこない”。


会社員達は気づかないまま会話を続ける。


久世はノートへ書く。


『駅前喫茶店』


『黒影確認』


『距離維持』


数秒後。


人影が消える。


普通の夕方へ戻る。


世界は壊れていない。


だが。


静かに変化し続けていた。


――観測記録


観測層:第3層

対象:現実世界


状態:局地共有拡散段階


更新:

一般会話レベルでの夢共有を確認


変化:

対処法認知 微拡散


評価:

人類側局地適応 継続中


補足:

侵食存在は現在接近抑制傾向


追加記録:

都市部黒影反応を確認


結論:

現実側静的変化 継続中


(次話へ)


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