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■ 第75話 「黒い雨」
ケルト世界。
森の外れ。
今日は雨だった。
黒い。
普通の雨ではない。
薄く濁っている。
神兵達が簡易結界を確認している。
最近、“黒雨区域”が増え始めていた。
ケルヌンノスが空を見る。
「……広がったな」
神兵が記録板を確認する。
「前回より三区域増加です」
急激ではない。
だが。
確実。
最近の侵食は全部そうだった。
静かに増える。
その時。
黒雨の中を、小さな影が横切る。
狼。
黒い。
輪郭が揺れている。
だが。
結界へ近づかない。
一定距離を保っている。
神兵の一人が呟く。
「また様子見だ……」
最近はこればかり。
接触。
観察。
距離確認。
ケルヌンノスが結界石へ触れる。
刻まれた神名。
その瞬間。
周囲の黒雨が少し弱くなる。
神兵が小さく息を呑む。
「やっぱり効いてる」
ケルヌンノスは森を見る。
「完全じゃない」
「だから続ける」
静かな雨だった。
誰も叫ばない。
誰も突撃しない。
それでも。
確かに、“戦争”だった。
――観測記録
観測層:第3層
対象:ケルト世界
状態:黒雨観測段階
更新:
局地黒雨区域増加を確認
変化:
侵食環境多様化 継続中
評価:
結界石効果 維持中
補足:
侵食個体は固定領域接近を回避傾向
追加記録:
狼型侵食個体を確認
結論:
ケルト側環境侵食段階 継続中
(次話へ)




