■ 第41話 「人類側の異変」
現実世界。
東京。
夜。
雨が降っていた。
大学生の青年が、スマートフォンを見ながら歩いている。
動画サイト。
おすすめ欄。
以前より、“神話系動画”が減っていた。
都市伝説。
オカルト。
神話解説。
そういうものが、妙に表示されない。
青年は眉をしかめる。
「こんな少なかったっけ」
その時。
スマホ画面が一瞬だけ黒く染まる。
ノイズ。
数秒。
すぐ戻る。
青年は立ち止まる。
違和感。
だが。
理由が分からない。
そのまま歩こうとした時。
街頭ビジョンが突然止まった。
空気が少し変わる。
周囲の人々も足を止める。
画面が黒い。
そして。
一瞬だけ、“目”が映った。
沈黙。
次の瞬間。
通常映像へ戻る。
ざわつく人々。
「今の何?」
「放送事故?」
「気味悪……」
青年も空を見る。
だが。
何もない。
その時。
隣で歩いていた少女が、小さく呟いた。
「最近、“神様”って聞かなくなったよね」
青年が振り返る。
「え?」
少女はスマホを見ている。
「前はもっといっぱいあった気がする」
「神話とか、都市伝説とか」
沈黙。
青年は答えられない。
言われてみれば。
最近、本当に減った。
興味を持つ人も。
話題にする人も。
何故か。
自然に。
忘れている。
同時刻。
ギリシャ世界。
アテナが観測記録を見ていた。
顔色が悪い。
「……加速しています」
ゼウスが振り返る。
「何がだ」
「信仰減衰です」
資料が展開される。
人類側。
神話検索率。
神話関連話題。
宗教的興味。
全部、微減。
小さい。
だが。
確実に下がっている。
ポセイドンが舌打ちする。
「戦争してる場合じゃねぇな」
ハデスが静かに言う。
「気づかれずに削られている」
アテナは空を見る。
黒い。
以前より広い。
「“向こう側”は、人類へ直接干渉している可能性があります」
その時だった。
観測画面が乱れる。
ノイズ。
数秒。
そして。
黒い画面へ変わる。
沈黙。
アテナが即座に観測術式を展開する。
だが。
遅い。
画面の奥。
“目”が浮かんでいた。
以前より近い。
以前より鮮明。
そして。
その背後。
大量の“人影”。
空気が凍る。
ポセイドンが顔をしかめる。
「……人間?」
アテナの顔色が変わる。
「違います」
「ですが」
声が止まる。
「人類側存在を模倣しています」
沈黙。
つまり。
“向こう側”は、神だけではなく。
人間側も学習し始めている。
その瞬間。
黒い画面へ、文字が浮かぶ。
「忘却」
「進行中」
空気が止まる。
次の瞬間。
画面が戻る。
だが。
会議室の空気は変わっていた。
ポセイドンが小さく呟く。
「……静かに終わらせる気か」
誰も否定できなかった。
――観測記録
観測層:第3層
対象:現実世界
状態:信仰減衰加速段階
更新:
神話関連認識低下を確認
変化:
人類側存在模倣反応を確認
評価:
忘却侵食 拡大中
補足:
外部存在は人類社会へ干渉を開始している可能性あり
追加記録:
「忘却」メッセージを確認
結論:
信仰基盤 崩壊速度上昇
(次話へ)




