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■ 第40話 「静かな連合」

ギリシャ世界。


神殿会議室。


以前より、席が増えていた。


新たな神々が来ている。


エジプト。


ケルト。


メソポタミア。


まだ正式な連合ではない。


だが。


“情報交換”は始まっていた。


空気は重い。


誰も互いを信用していない。


本来なら敵同士。


信仰を奪い合う存在。


それでも。


今は集まっている。


アテナが資料を広げる。


「侵食速度は神話ごとに異なります」


「ですが」


視線が全員へ向く。


「共通点があります」


エジプト側のトートが静かに頷く。


「自己認識の曖昧化」


ケルト側の神が腕を組む。


「名前を忘れる現象か」


アテナは頷く。


「現在、北欧側と共同で対策検証中です」


ポセイドンが椅子にもたれる。


「石板確認な」


ケルト神が少し笑う。


「原始的だな」


「でも効いてる」


北欧側記録体のロキが壁際で言う。


完全な本体ではない。


それでも。


まだ存在している。


ロキは肩をすくめる。


「侵食ってさ」


「“曖昧な部分”から来るんだよ」


トートが資料を見る。


「こちらでも同様の傾向を確認しています」


「神名確認後、精神汚染率が低下」


沈黙。


少しずつ。


神話側が、“法則”を理解し始めていた。


その時だった。


会議室の隅。


黒い染みが浮かぶ。


空気が止まる。


全員が視線を向ける。


だが。


誰も攻撃しない。


もう分かっている。


消しても戻る。


染みは静かに揺れる。


そして。


文字が浮かぶ。


「連合」


「観測中」


ポセイドンが舌打ちする。


「盗み見趣味かよ」


ロキが笑う。


「むしろ堂々としてるだろ」


アテナは観測を続ける。


「干渉強度、低」


「今は観察段階です」


ハデスが低く言う。


「逆に不気味だな」


その時。


エジプト側の神が小さく呟く。


「……最近、信仰が減っています」


空気が少し重くなる。


トートが続ける。


「人類側で、神話への関心低下を確認」


「特に若年層」


ポセイドンが顔をしかめる。


「そっちまで来てるのか」


アテナは資料を更新する。


「神話侵食と信仰減衰が連動している可能性があります」


ロキが壁へ寄りかかる。


「つまり」


「俺らが忘れられるほど、“向こう側”が入りやすくなる」


誰も否定できない。


その時。


空から、機械的な声が響いた。


「観測継続」


Archive。


また。


動かない。


ケルト側の神が空を睨む。


「本当に何もしないんだな」


アテナは空を見る。


ほんの少しだけ。


以前より近い。


視線。


存在感。


だが。


まだ動かない。


「……まだです」


小さく呟く。


その意味は、誰にも分からない。


黒い染みだけが。


静かに会議室の隅で揺れていた。


――観測記録


観測層:第3層

対象:神話連合初期会議


状態:情報共有段階


更新:

複数神話間接触を確認


変化:

存在固定対策 共有開始


評価:

局所協力体制 形成中


補足:

外部存在側は連合形成を観測中


追加記録:

信仰減衰との関連性を確認


結論:

神話戦争構造 変化進行中


(次話へ)


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