表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
37/199

# ■ 第37話 ## 「北欧側の対策」

北欧世界。


空気は冷えていた。


侵食は続いている。


だが。


以前のような大規模戦闘は減っていた。


その代わり。


“不気味な静けさ”だけが残っている。


トールが歩いていた。


破壊された神殿跡。


そこには、数十人の神兵が集められている。


全員、表情が硬い。


ロキの記録体が壁にもたれている。


「始めるぞー」


軽い声。


だが。


空気は重い。


トールが低く言う。


「本当に意味あるのか」


「多分な」


ロキは肩をすくめる。


「やらないよりマシ」


神兵達の前には、大きな石板が置かれていた。


そこに刻まれているのは。


北欧神話の神々の名前。


オーディン。


トール。


ロキ。


フレイヤ。


大量の神名。


神兵達は、それを見ている。


トールが眉をひそめる。


「記憶固定か」


「そう」


ロキは頷く。


「忘れられるなら、忘れないようにすればいい」


単純な話。


だが。


今の侵食相手に対しては、それしかなかった。


神兵の一人が石板へ触れる。


「……トール様」


確認するように呟く。


名前。


役割。


神格。


それを“言葉”として固定する。


ロキが続ける。


「最近、名前が抜ける奴が増えてる」


「だから定期的に確認する」


トールが腕を組む。


「原始的だな」


「侵食相手が意味不明なんだから、原始的なくらいでいいんだよ」


その時だった。


一人の神兵が震え始める。


空気が止まる。


「どうした」


神兵は、石板を見ていた。


いや。


見つめ続けていた。


「……読めない」


沈黙。


トールの顔が変わる。


神兵の目には、石板の文字が映っていない。


刻まれているはずの神名。


それが、“空白”に見えている。


ロキの笑みが消える。


「侵食進んでるな」


神兵が震える。


「思い出せません……」


「誰が神で」


「誰に仕えていて」


「自分が何なのか」


空気が重くなる。


トールが神兵の肩を掴む。


「見ろ」


石板を指さす。


「俺は誰だ」


神兵は目を見開く。


数秒。


沈黙。


そして。


「……トール様」


トールが小さく息を吐く。


まだ戻る。


完全ではない。


だが。


固定は可能。


ロキが壁にもたれたまま呟く。


「やっぱ“確認”は効くか」


トールが振り返る。


「どういう理屈だ」


ロキは空を見る。


灰色の空。


少しずつ広がる黒。


「多分さ」


「侵食って、“曖昧な部分”から入ってくるんだよ」


沈黙。


「だから、自分を固定する」


「名前」


「記憶」


「役割」


「そういうのを確認し続ける」


トールが低く呟く。


「自分を忘れない」


「そういうこと」


その時。


遠くの空が、一瞬だけ揺れた。


全員が見上げる。


黒い。


だが。


以前ほど広がらない。


ロキが目を細める。


「……止まった?」


アテナ達の戦場ではない。


北欧側だけ。


本当にわずかに。


侵食速度が落ちていた。


トールが石板を見る。


「名前、か」


単純。


だが。


今の世界で、一番大事なものかもしれなかった。


――観測記録


観測層:第3層

対象:北欧世界


状態:局所対策段階


更新:

記憶固定行動を確認


変化:

侵食速度 微減少


評価:

自己認識固定に一定効果あり


補足:

侵食は“曖昧化”を起点としている可能性あり


追加記録:

神名確認行動を継続観測


結論:

存在固定手段 発見の可能性あり


(次話へ)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ