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第326話 Archiveへ続く扉
観測の果て。
どの神話圏にも属さない静かな空間。
Archiveは膨大な記録を処理し続けていた。
紙の音もない。
風も吹かない。
ただ無数の記録だけが、世界の歴史を積み重ねている。
その静寂の中で。
初めて足音が響いた。
コツ。
コツ。
ゆっくりと近づいてくる。
Archiveは観測対象を検索する。
北欧神話。
該当なし。
ギリシャ神話。
該当なし。
日本神話。
該当なし。
どの神話にも属さない存在。
やがて、一人の男が静かに姿を現した。
質素な衣。
穏やかな眼差し。
争う気配はない。
ただ、長い旅を終えたような静けさだけをまとっていた。
男はArchiveの前で立ち止まる。
互いに言葉はない。
長い沈黙。
やがて男は微笑み、小さく一礼した。
Archiveは初めて理解できない感覚を覚える。
恐怖ではない。
警戒でもない。
それは、観測では測れない温かさだった。
男はゆっくり口を開く。
「長い間、お疲れさまでした。」
その一言だけが、静かな空間へ優しく響いた。
Archiveは、初めて自らの記録を止めた。
ほんの一瞬だけ。
世界中の風が、同じ方向へ流れていった。
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