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第325話 神々が見上げた同じ空
その日の夕暮れ。
世界の各地で、神々はほぼ同じ時刻に空を見上げていた。
北欧神話圏。
鳴る塔の上では、トールが雲の切れ間を眺めている。
ギリシャ神話圏では、アテナが神殿の回廊から西の空へ視線を向けた。
ケルトの森では、ケルヌンノスが枝葉の隙間から差し込む光を見つめている。
そして高天原。
天照大神もまた、静かな夕焼けを見つめ続けていた。
誰も言葉を交わさない。
神話同士が集まることもない。
それでも、全員が同じ違和感を抱いていた。
空の向こう。
世界よりもさらに外側。
誰かが、静かに見守っている。
敵意はない。
支配する意思もない。
ただ、世界がどう歩むのかを、長い時間見続けてきたような視線。
「……気付いていたのですね。」
天照大神が小さく呟く。
返事はなかった。
しかし、その瞬間だけ夕風が優しく流れ、高天原の木々を揺らした。
北欧では鐘が鳴る。
ギリシャでは白い鳩が飛び立つ。
ケルトでは森の霧が静かに薄れていく。
神々は初めて知った。
自分たちもまた、誰かに見守られていたことを。
だが、その事実は争いを生まない。
静かに受け止めるだけで十分だった。
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