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第322話 資料室へ届いた一枚の葉
夕暮れ。
資料室の窓から、風に乗って一枚の葉が舞い込んできた。
久世は机の上へ落ちた葉を拾い上げる。
見覚えのない形だった。
日本の木ではない。
北欧でもない。
ケルトとも違う。
柿崎も葉を見つめる。
「どこの神話圏か分からないわね。」
「分からないまま残しましょう。」
久世は小さく笑った。
分類できないものを無理に決めつける必要はない。
資料室は答えを作る場所ではなく、世界を残す場所だからだ。
葉は乾いている。
しかし折れてはいない。
久世は新しい保存箱を取り出し、柔らかな布の上へそっと置いた。
品名。
『未分類の葉 一枚』
それだけを書き添える。
外では子どもたちの笑い声が聞こえていた。
商店街では夕飯の支度が始まり、駅前では会社員たちが家路を急ぐ。
その日常は、神話とも侵食とも無関係に流れている。
だが久世は知っていた。
誰かが生きる毎日こそ、世界を支える一番強い記録なのだと。
保存箱を棚へ戻す。
資料室には静かな紙の匂いだけが残り、夕暮れの光が長く床を照らしていた。
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