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第321話 光は誰を照らしているのか
日本神話圏。
高天原は、今日も静かな光に包まれていた。
雲海の上を柔らかな風が渡り、社の柱へ細かな木漏れ日が揺れる。
天照大神は一人、広がる空を見上げていた。
世界へ降り注ぐ光は変わらない。
森にも。
町にも。
神殿にも。
誰かを選ぶことなく届いている。
しかし今日、その光の先で微かな違和感が生まれた。
「……見ている。」
誰かが世界を観測している。
神でもない。
人でもない。
侵食とも違う。
あまりにも静かな視線。
敵意は感じない。
だが、世界そのものを外側から見守る存在。
天照大神は目を閉じた。
光はさらに穏やかに広がっていく。
「あなたは、この世界を愛しているのですか。」
問いは空へ溶けた。
返事はない。
ただ、高天原の風だけが少しだけ向きを変えた。
遠く離れた資料室では、久世が何気なく窓の外を見上げる。
同じ瞬間だった。
誰も理由を知らない。
それでも世界は、ほんの少しだけ何かへ気付こうとしていた。
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