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■ 第3話 「侵攻開始」

空間の境界が、ゆっくりと歪んでいた。


本来なら交わらないはずの領域同士が、無理やり接続されている。

その歪みの先には、別の神話の世界が広がっていた。


ロキはその様子を楽しそうに眺めている。


「開くなこれ。思ったより簡単だ」


軽く言いながら、足で境界を押し広げる。

まるで扉をこじ開けるような雑さだった。


オーディンは何も言わずにそれを見ている。


「止めなくていいのか?」


ロキが振り返る。


「向こう側、完全に別の神話だぞ」


問いかけに対して、オーディンは短く答えた。


「問題はない」


その視線はすでに先を見ている。


境界の先。

そこに存在する神々と、その背後にある“信仰”。


やがて、裂け目が完全に開いた。


空気が変わる。


北欧とは違う重さ。

違う流れ。


異なる神話の世界。


「……へえ」


ロキが口角を上げる。


「ちゃんとあるな、他所の神ってやつが」


遠くに、複数の気配があった。


まだこちらに気づいていない。

警戒もしていない。


平和な状態のまま、存在している。


オーディンが一歩踏み出す。


その瞬間、周囲の空気が張り詰めた。


「確認する」


誰に向けた言葉でもない。


ただの行動宣言だった。


標的は、最も近い存在。


強くはない。

だが、完全に消えてもいない。


信仰は残っている。


次の瞬間。


槍が放たれた。


距離は意味を持たなかった。


神話の境界を越えて放たれたそれは、

一直線に対象へ到達する。


反応は、遅い。


防御も、間に合わない。


貫いた。


音もなく、存在が崩れる。


抵抗はなかった。


そして。


「……来るぞ」


ロキが小さく呟く。


流れが発生した。


視覚では捉えにくい。

だが確かに、何かが動いている。


消えた存在の残滓が、

オーディンへと収束していく。


オーディンは動かない。


ただ、それを受け入れる。


数秒後。


わずかな変化があった。


「どうだ?」


ロキが聞く。


「増えている」


短い答え。


ロキは笑った。


「だろうな」


オーディンは空間の向こう側を見る。


そこには、まだ多くの存在がある。


信仰を持つ神々。


守られている領域。


奪われていない力。


思考は早かった。


一体ずつでは遅い。


効率が悪い。


ならば。


「領域ごと奪う」


ロキが目を細める。


「いいね」


「それ、戦争になるぞ」


オーディンは否定しない。


「構わない」


それだけだった。


決定に、迷いはない。


次の瞬間。


境界がさらに広がる。


北欧神話の戦力が、動き始めた。


静かに。


だが確実に。


他神話への侵攻が、開始される。


この時点で、まだ誰も理解していなかった。


これは戦争ではない。


終わりの始まりであることを。

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