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■ 第2話 「それは戦争と呼ぶにはあまりに単純だった」

北欧の空は、静かだった。


氷と霧に覆われた世界。

終わりを知る神々の領域。


その中心にいるのは――


オーディン


「……それで?」


低い声が落ちる。


玉座に座るその存在は、動かない。

ただ一つの目だけが、前を見ていた。


その前に立つのは、ロキ。


退屈を壊した張本人。


「神を壊したらさ」


軽く言う。


まるで遊びの話のように。


「力が流れてきた」


沈黙。


その一言で、場の空気が変わる。


「……もう一度言え」


ロキは肩をすくめる。


「だから、奪えるって話だよ」


「神を殺せば、その信仰が――」


言い終わる前に、


オーディンは立っていた。


「証明しろ」


短い言葉。


それだけで十分だった。


ロキは笑う。


「いいね、その顔」


次の瞬間。


空間が歪む。


北欧神話の外へと繋がる“道”。


神話と神話の境界。


本来なら、踏み越えることのない領域。


だが、今は違う。


「行こうぜ」


ロキは一歩踏み出す。


その先には、別の神話の世界。


かすかに残る、微弱な信仰。


消えかけた存在。


「ちょうどいいのがある」


そこにいた。


同じような、

名もなき神。


オーディンは、ただ見ている。


ロキは振り返る。


「見てろよ」


そして――


壊した。


一瞬だった。


神は、何もできずに消えた。


そして。


「……」


オーディンの目が、わずかに細まる。


流れていた。


見えないはずのものが、確かに動く。


消えた神の“残骸”が、

ロキへと吸い込まれていく。


「……本当か」


ロキは手を広げる。


「だろ?」


確かに、増えている。


微弱だが、確実に。


それは証明だった。


神は、奪える。


沈黙が落ちる。


だがそれは迷いではない。


思考だ。


戦うかどうかではない。


「どこから奪うか」


オーディンは空を見る。


この世界ではない場所。


別の神話。


別の信仰。


別の神々。


そして、理解する。


これは戦争ではない。


もっと単純なものだ。


「狩りだ」


その言葉は、あまりにも静かだった。


だが、その意味は重い。


「全神話を対象とする」


ロキが笑う。


「やっと楽しくなってきたな」


その瞬間。


北欧神話は、決断した。


世界を越え、

神を狩り、

信仰を奪う。


すべてを、力に変えるために。


戦争はまだ始まっていない。


だが、もう止まらない。

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