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第231話「オーディンが外を見る」
オーディンが議場の屋根に上がったのは、夜明け前だった。
誰も呼ばなかった。一人で。空を見た。神話圏の上端、概念の薄い層。四日間見続けていた場所。今日は違うものが見えた。
増えている、と三日前に言った。今日分かったのは、増えているのは一種類ではないということだった。侵食は均一ではない。速い流れと遅い流れがある。そして、止まっている場所がある。
止まっている場所に共通するものが、夜明けの光の中で少し見えた。気のせいかもしれない。だがオーディンは気のせいだと判断する前に、まず記録する習慣を持っている。片目を失った代わりに得た習慣だ。
「止まっている場所には、それぞれに記録者がいる。」
誰にも言わなかった。屋根から降りて、議場に戻った。トールが朝食を食べていた。「何か分かったか」と聞いた。「少しだけ」とオーディンは答えた。それ以上は言わなかった。
観測層:第2層 記録単位:高位神観測 対象個体:オーディン
備考:記録者の存在と侵食減速の相関をオーディンが独自に観測。Archiveの仮説と一致。
記録主体:Archive 状態:稼働中




