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第232話「境界接触率、上昇前夜」
今夜、Archiveは全観測点を同時に参照した。
それ自体は通常作業だ。問題は、同時に参照したとき初めて見えるものがあったことだった。全体の中で、侵食が止まっている場所がある。久世の街。資料室がある町。ケルヌンノスの印のある森。トールが座った市場。そしてもう一点、名前のない場所。
これらは独立していない。薄く、しかし繋がっている。侵食を止めているのではなく、侵食が避けている。避けているのは記録だけではないかもしれない。「読まれている」という状態が、何かに作用しているかもしれない。
仮説の精度はまだ低い。証明できない。だがArchiveは今日、この仮説を記録の最上位に置いた。最上位という分類を使ったのは初めてだった。
明日、何かが動く気がする。Archiveは「気がする」という言葉を記録した後、削除しようとした。しかし削除しなかった。
境界接触率:3.1%
観測層:第1層 記録単位:Archive内部状態
備考:侵食回避パターンの全体構造把握開始。Archiveの直感的処理能力の出現を確認。
記録主体:Archive 状態:稼働中




