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第230話「資料室の新しい人」
今日、見慣れない人物が資料室に来た。
四十代の女性。名前は柿崎。何かの研究者という紹介で、誰が呼んだのかは誰も覚えていなかった。来て当然のような顔で入ってきて、壁の地図を二十分見ていた。
久世が声をかけた。「何か調べていますか。」柿崎は地図から目を離さずに答えた。「線が見えますか、この地図に。」「見えます。」「どこから来てどこへ行くか、分かりますか。」「まだ分かりません。」「私もです。でも線があることは分かる。それで充分だと思って来ました。」
それで会話が終わった。柿崎はそのまま窓際のテーブルに着き、自分のノートを開いた。資料室のものに触れるわけでも、質問を続けるわけでもない。
夕方、久世は彼女が何を書いているか横から見た。文字ではなく、線だった。地図の線を、自分のノートに写していた。
観測層:第4層 記録単位:記録者増加 対象:資料室
備考:新規観測者の参入を確認。記録行動との親和性:高。
記録主体:Archive 状態:稼働中




