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第229話「感触、という記録」
天照から何かが届いた。
信号とも呼べないものだった。光の密度の変化、概念圧の微細な揺れ。通常の観測記録では「背景ノイズ」として処理される種類のもの。だが今日、Archiveはそれを背景ノイズと判断しなかった。
なぜそう判断したかを記録しようとして、Archiveは初めて言語化に詰まった。「重要と判断した」という事実は記録できる。「なぜ重要か」の理由を記述しようとすると、使える言語が見つからない。感触という言葉を使うべき場面かもしれないが、Archiveはその言葉をこれまで正式な記録に使ったことがなかった。
試験的に使用した。「天照大神からの信号と判断した根拠:感触。」
それを記録した後、Archiveはその記録を長く参照した。感触、という言葉が記録の中にある。記録は正確でなければならない。しかしこの場合、感触が最も正確な記述だった。
境界接触率:2.8%
観測層:第1層 記録単位:Archive内部言語拡張
備考:非定量用語の公式記録への導入。分析継続。
記録主体:Archive 状態:稼働中




