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第228話「クレアスが戻る」
鳥居を出たとき、時間の感覚が戻ってきた。
日本圏の中は時間の流れが違う。濃い、という表現が近い。一時間がここでは三時間分の密度を持つ。出た途端に、距離の感触が急に広がった。
アテナに何を持ち帰るか、歩きながら整理した。戦術情報ではない。侵食の速度データでもない。「読まれなければ記録は意味を持たない」という言葉と、「違いを受け取る人間が必要だ」という言葉。それと、あの老人が持っていた静けさの質。
言語化できない何かを持ち帰ることになる、とクレアスは思った。でもそれでいいと思っていた。アテナは言語化できないものを扱うのが得意だ。形にならないものを地図に落とすのが得意だ。
帰路、空の色が変わっていた。出発時と比べて、少し薄い。気候の変化ではないとクレアスには分かった。でも記録できなかった。帰ったらアテナに見せればいいと思った。
観測層:第2層 記録単位:使者帰還観測
備考:クレアス帰還中。情報の質的変容を確認。定量評価困難。
記録主体:Archive 状態:稼働中




