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第227話「夢記録の空白」
今週の夢記録に、初めて白紙が交じった。
氏名と日付だけ書いて、内容が書けなかった人。三件。理由の欄に一人がこう書いていた。「夢を見たのは分かるのですが、何も思い出せません。夢を見たという感覚だけがあります。」
久世はその記録を長く見ていた。内容のない夢記録というのは矛盾している。記録する中身がない。でも提出してきた。提出することに意味を感じたから、したのだと思う。
その感覚は久世には分かった。何を書けばいいか分からなくても、ここに来ることに意味がある、という感触。それが今、資料室を支えているものの一つだと思っていた。
白紙の三件に、久世は「受理」のスタンプを押した。ルール上は不備になる。でも押した。内容のない記録が資料室に存在することにも、記録の意味があると思った。何が失われているかを示す記録として。
観測層:第4層 記録単位:記録品質 対象:夢記録
備考:内容欠落記録の増加開始。形式のみ残存パターンの確認。
記録主体:Archive 状態:稼働中




