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第225話「トールが動いた」
オーディンの話を聞いてから、トールは三日間それについて考えた。
「戦う相手ではない」という言葉が引っかかり続けた。受け入れられないのではなく、受け入れ方が分からなかった。戦えない相手に対して、自分はどう機能するのか。
前線の塔から降りた。内陸へ向かった。侵食の遅い場所を探した。オーディンの言う「自分が何であるかを忘れないようにする」というのが、具体的に何を意味するのか、自分なりに確かめたかった。
村があった。神話圏の内側、信仰の濃い地域。人々が日常を送っていた。市場があり、子どもが走り、老人が話していた。侵食の影響は薄かった。ここではまだ、音に意味があり、顔に表情がある。
トールは市場の端に座って、一時間それを見ていた。戦っているわけではない。守っているわけでもない。ただ、見ている。それでも、何かをしている気がした。
観測層:第3層 記録単位:神行動観測 対象個体:トール
備考:戦闘以外の維持行動の開始を確認。
記録主体:Archive 状態:稼働中




