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第223話「ケルヌンノスの枝が動いた」
朝、森に戻ると枝が倒れていた。
昨日地面に刺したもの。風では倒れない角度で刺してあった。引き抜かれたのではなく、押し倒された形だった。ケルヌンノスはその場所をもう一度触れた。昨日より薄くなっている。わずかに。だが確かに。
指先が消えかける、というのは比喩ではない。物理的に輪郭が揺れる。自分が何であるかの感触が、その場所だけ一瞬曖昧になる。ケルヌンノスは四千年以上、森の境界を管理してきた。これは境界が壊れているのではなく、境界が問われている状態だと思った。
この場所を守るか、記録するか。今は記録を選んだ。守ろうとすることが逆に触れることになる気がした。枝の代わりに、石を三つ並べた。倒れても残る。
森は静かなままだった。何も変わっていないように見えた。それが問題だと、ケルヌンノスは思った。
観測層:第3層 記録単位:境界薄化進行 対象:ケルト圏境界
備考:守護行動が停止し、記録行動への切り替えを確認。
記録主体:Archive 状態:稼働中




