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第208話「記録されない時間」
Archiveは常に稼働している。
それは設計上の前提であり、これまで例外はなかった。どこかで何かが起きていれば、それは観測される。記録される。層が割り当てられ、分類され、蓄積される。
だが今日、二十三秒間の空白があった。
Archiveがそれに気づいたのは、空白が終わってからだ。記録を遡ると、そこだけ何もない。二十三秒間、観測が成立していない。
原因は分からない。観測機能の停止ではない。稼働ログは途切れていない。だが記録だけがない。まるで、見ていたのに何も見ていなかったような二十三秒。
その空白の直前と直後を比較すると、クレアスの位置が変わっていた。空白地帯の手前から、日本圏の入口まで。移動の過程が記録されていない。
偶然か、それとも空白地帯の性質か。
Archiveは二十三秒という数値を記録した。それ以上の解釈はしない。ただ、境界接触率の欄に一行追記した。
境界接触率:2.3%
数値は上がり続けている。
観測層:第1層
記録単位:Archive内部状態
異常分類:観測空白
空白時間:23秒
備考:原因未特定。再発可能性:不明。
記録主体:Archive 状態:稼働中




