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第205話「線の先に何があるか」
久世が地図を広げたのは昼過ぎだった。
資料室に一人。他の五人は外回りに出ている。こういう静かな時間に、久世は地図を広げる癖がある。誰かと話しながら見るより、一人で見たほうが気づくことがある。
アテナが送ってきた資料のコピーが手元にある。侵食確認地点を繋いだ線。久世はそれを自分の地図に書き写しながら、ひとつ気になっていたことを確かめた。
線の向きが、ある神社の裏山を通っている。
小さな神社だ。地元の人間しか知らない。ご祭神の名前も、由来も、資料に残っていない。久世は半年前に一度だけ行ったことがある。境内に入った瞬間、何かが違うと思った。静かすぎた。音が少ないのではなく、音の種類が違う感じがした。
あの感覚を記録しておいた。「音の質が異なる。原因不明。」
今、その一文が意味を持ち始めていた。
久世は電話を取って、それから置いた。誰に連絡すべきか、まだ分からない。
観測層:第4層
記録単位:接触地点特定試行
対象個体:久世恒一
備考:侵食線と地方神話圏の重複を確認。検証未着手。
記録主体:Archive 状態:稼働中




