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第204話「使者の準備」

使者を選ぶのに、アテナは半日かけた。


条件は三つだった。日本の神話圏に近い気質を持つこと。交渉ではなく対話ができること。何も持ち帰れなくても動揺しないこと。


三つ目が一番難しかった。空手で戻る可能性の方が高い。アテナ自身も、日本側が何かを知っているとは確信していない。ただ、あの地図の線がどこへ向かっているかを考えたとき、答えに近い場所がそこしかなかった。


選ばれたのは、若い伝令神だった。若いというのはギリシャ的な時間尺度の話なので、人間の感覚では充分に古い存在だが、神々の中では経験が浅い。その分、先入観が少ない。


「何を聞いてくればいいですか」と彼は言った。


アテナは少し考えてから答えた。「何かが止まっている理由を。」


伝令神は頷いた。意味が分かったのかどうか、アテナには判断できなかった。でも出発することに迷いはない様子だった。それで充分だと思った。


使者が去った後、資料室に戻る。地図の線を見る。静かな部屋で、アテナはひとつだけ確信していることを思った。戦術は、まだ始まっていない。


観測層:第2層

記録単位:勢力間接触

対象神話:ギリシャ→日本

状態:接触試行開始

備考:使者派遣確認。到達予測:未算出。

記録主体:Archive 状態:稼働中

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