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第202話「資料室の朝礼」
資料室には朝礼がない。
それは最初から決まっていたことではなく、いつの間にかそうなっていた。集まる人間が増えても、誰も仕切ろうとしなかったし、仕切る必要もなかった。各自が来て、各自が始める。それだけだ。
今朝は六人いた。久世を含めて。
壁に貼られた地図は三ヶ月前より細かくなっていた。赤い印が増えている。侵食確認地点。だが数が増えた割に、議論は減っていた。最初の頃は印が一つ増えるたびに声が上がった。今は皆、印を見てから自分の作業に戻る。慣れたわけではないと久世は思っている。慣れではなく、言葉にする前に分かることが増えたのだ。
窓際の席の女性が、昨夜届いた夢記録の束を開く。厚い。百三十件を超えている。一ヶ月前の倍だ。
「件数だけ見ると増えてるんだけど」と彼女が言う。「内容が薄くなってる。詳細を書ける人が減ってる。」
誰も返事をしない。返事の代わりに、それぞれが手を動かし始めた。
観測層:第4層
記録単位:記録拠点状態
対象:資料室
状態:稼働中
備考:夢記録件数増加、内容詳度低下。記録の量と質が反比例し始めている。
記録主体:Archive 状態:稼働中




