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第160話 第六の赤線
ギリシャ世界。
資料室。
夜。
灯り。
紙束。
人。
増え続けている。
保存班。
口伝班。
複写班。
監視班。
誰も暇ではない。
アテナが報告を見る。
『掲示情報消失』
『海面露出確認』
『空白祭壇確認』
沈黙。
長い。
若い神兵が言う。
「残っているのに」
誰も続きを言わない。
残っている。
だが。
意味だけが消える。
名前だけが消える。
記録だけが消える。
アテナが静かに赤線を引く。
六本目。
分類名。
『意味侵食』
部屋が静かになる。
今までとは違う。
存在を消すのではない。
意味を消す。
信仰を消す。
記憶を消す。
そのための侵食。
窓。
黒い揺れ。
今日は。
十分。
消えない。
誰も目を逸らさない。
外。
誰かが空白を見つめ。
誰かが海を見張り。
誰かが失われた祭壇を記録する。
世界はまだ残っている。
だが。
静かに。
確実に。
奪われ続けていた。
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