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第136話 最初の赤線

ギリシャ世界。


資料室。


夜。


灯り。


紙束。


机。


保存班。


記録班。


以前より増えた。


忙しい。


静かに。


確実に。


アテナが報告を見る。


『輪 十三』


『海中影 七秒』


『消失名称 一件』


沈黙。


部屋が静かになる。


若い神兵が確認する。


「間違いでは?」


別の神兵が首を振る。


「照合済み」


沈黙。


アテナが赤い線を引く。


初めてだった。


今まで。


侵食。


観測。


夢。


全て小規模。


だが。


今回は違う。


失われた。


実際に。


一つ。


神兵が静かに書く。


『名称消失事案 第一号』


窓。


黒い揺れ。


今日は長い。


三十秒。


消えない。


“観測”。


誰も逃げない。


誰も叫ばない。


ただ。


記録する。


外。


誰かが夢を書く。


誰かが海を守る。


誰かが森で名を呼ぶ。


世界はまだ壊れていない。


だが。


初めて。


失った。


資料室の灯りは。


夜更けまで消えなかった。


(次話へ)


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