113/199
第113話 眠れない夜
現実世界。
夜。
住宅街。
静かな雨。
マンションの一室。
若い母親が台所で水を飲んでいた。
時計。
午前三時。
最近。
眠れない。
理由は説明しづらい。
怖い。
だけではない。
何かを待っている感覚。
窓。
少し暗い空。
その時。
隣室。
子供の声。
「また見てる」
小さい寝言。
母親が静かに部屋へ向かう。
子供は眠っている。
汗。
少し荒い呼吸。
「海」
「黒い鳥」
「見てる」
小さい声。
母親の手が止まる。
最近。
学校からも話を聞いた。
夢を見る子。
増えている。
母親は小さく呟く。
「大丈夫」
何となく。
言葉にする。
名前。
住所。
家。
自分。
最近。
SNSで見た。
“落ち着く方法”。
理由は分からない。
だが。
少しだけ。
安心する。
窓の外。
高い場所。
黒い点。
雨の向こう。
何かがいた。
だが。
近づいてこない。
朝はまだ遠い。
それでも。
夜は静かに過ぎていた。
(次話へ)




