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第101話 朝の神社道

現実世界。


朝。


山の麓。


神社へ続く坂道。


少し湿った空気。


昨夜の雨がまだ残っていた。


鳥の声。


遠くで車音。


会社員の男がゆっくり坂を登っている。


目の下に少し疲れ。


片手には小さなメモ帳。


最近、この坂を通う者が少し増えた。


誰も理由を多く語らない。


眠れない。


夢を見る。


何となく落ち着かない。


ただ。


ここへ来ると少し静かになる。


そんな者が増えていた。


少し前。


老人が箒で落葉を集めている。


会釈。


短い挨拶。


それだけ。


その時。


坂道脇の木陰が少し黒く揺れた。


沈黙。


“目”。


薄い。


遠い。


会社員の男が止まる。


深呼吸。


最近、覚えた。


急がない。


慌てない。


小さく言葉を出す。


「佐藤 恒一」


「営業」


「東京」


風。


葉が揺れる。


“目”が少し揺らぐ。


近づかない。


老人が箒を止めず言う。


「今日も来とるなぁ」


誰へ向けた言葉でもない。


男が少し笑う。


怖い。


それでも。


朝は来ている。


鳥の声。


鈴。


空はまだ黒い。


だが。


坂道は静かに続いていた。


(次話へ)


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