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■ 第10話 「接触は成立しない」

名が与えられた瞬間、空間の密度が変わった。

それは物理的な圧力ではない。

だが、確実に“重く”なる。


「……今のは、まずいな」

ポセイドンが低く言う。


「名称の確定は、現象の安定化を招きます」

アテナが即座に補足する。


「曖昧だったものに、枠が与えられる」


「つまり?」


「“存在しやすくなる”」


沈黙。


その間にも、変化は進んでいる。


先ほどまで輪郭が曖昧だったそれが、

わずかに形を保ち始めている。


完全ではない。

だが、崩れない。


「固定されたか」

ゼウスが短く言う。


「一部のみ」


アテナは即答する。


「まだ完全な定義には至っていません」


「なら壊せるな」


ゼウスが前に出る。


雷が収束する。


一点集中。

拡散ではなく、圧縮。


「消える前に叩く」


放たれる。


直撃。


空間ごと貫く威力。


だが。


「……残ってる」


ポセイドンが目を細める。


攻撃は命中している。

それでも、消えない。


「耐久ではありません」


アテナが即座に修正する。


「干渉が成立していない」


「どういうことだ」


「攻撃が“対象に触れていない”」


意味が通らない。


だが、現象としては成立している。


ハデスが一歩前に出る。


「なら、こちらから合わせる」


影が広がる。


死の領域を重ねる。


通常なら、すべてを引きずり込む。


だが。


「……反応がない」


ハデスの声が低くなる。


「存在していないものは、死なない」


結論が出る。


ゼウスが息を吐く。


「攻撃も、捕縛も通らない」


ポセイドンが笑う。


「じゃあどうすんだよ」


「方法はある」


ロキが口を挟む。


全員の視線が集まる。


「条件を変えればいい」


「説明しろ」

ゼウスが言う。


「簡単だ」


ロキは楽しそうに続ける。


「“こっち側”に引きずり込む」


沈黙。


「できるのか」


「やってみる価値はある」


ロキは空間に手をかざす。


境界を操作する。


無理やり引き寄せる。


歪みが集中する。


そして。


一瞬だけ。


それが、完全に“こちら側”へ落ちた。


「今だ」


ゼウスが即座に反応する。


雷が落ちる。


直撃。


今回は、手応えがあった。


「通ったな」

ポセイドンが笑う。


だが。


次の瞬間。


それは崩れた。


破壊ではない。


“戻った”。


「……固定できねえ」


ロキが舌打ちする。


「一瞬だけだ」


アテナが冷静にまとめる。


「こちら側に引き込めば干渉は可能」


「しかし維持できない」


ゼウスが結論を出す。


「時間が足りん」


「それだけではありません」


アテナが続ける。


「相手が“こちらに留まる理由”がない」


ハデスが静かに言う。


「来ているのではない」


「触れているだけだ」


その言葉で、全員が理解する。


これは侵略ではない。


干渉だ。


そしてその規模は、拡大している。


「……面倒な相手だな」

ポセイドンが息を吐く。


「違う」


ゼウスが否定する。


「相手ではない」


短く言い切る。


「現象だ」


その認識が、すべてを変える。


戦う対象ではない。


止めるべき“何か”。


だが。


方法は、まだ見えていない。


同時刻。


観測層:第3層対象:外部存在(仮定)名称:クトゥルフ(暫定)状態:部分顕現干渉可否:不可(限定的例外あり)


記録は続く。


補足:対象は「定義に依存して安定する」傾向あり命名行為が影響している可能性


わずかな間。


推定:現象ではなく「体系外存在」


そして。


結論更新:既存神話体系では対処不能


観測は止まらない。


だが。


まだ、選択は行われていない。


(次話へ)

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