■ 第11話 「停止条件」
干渉は続いている。
接触は成立しない。
それでも“削られる”現象だけは止まらない。
「結論を出す」
ゼウスが言う。
「現状の手段では対処できない」
ポセイドンが腕を組む。
「じゃあどうする」
「戦い方を変える」
短い返答。
アテナが即座に補足する。
「対象は“個体”ではありません」
「現象でもない」
一瞬、間を置く。
「“条件”です」
ポセイドンが眉をひそめる。
「また面倒な話だな」
「単純です」
アテナは続ける。
「発生している理由を断つ」
「原因を潰すってことか」
「違います」
即否定。
「発生“条件”を満たさない状態にする」
ゼウスが理解する。
「出現させない」
「はい」
ハデスが低く言う。
「では、その条件は何だ」
沈黙。
分かっていない。
だが、仮説はある。
「戦争です」
アテナが言い切る。
「神話同士の干渉が、歪みを発生させている」
ポセイドンが吐き捨てる。
「やめろってか?」
「完全停止が最も確実です」
場が凍る。
ゼウスは動かない。
「不可能だ」
即答だった。
「ここで止めれば、北欧が伸びる」
「はい」
アテナは否定しない。
「ただし継続すれば、さらに大きな損失が出ます」
ハデスが静かに言う。
「どちらも破綻する」
その通りだった。
戦えば削られる。
止めれば奪われる。
選択肢は、ない。
その時だった。
「一つあるぞ」
ロキが口を挟む。
全員がそちらを見る。
「止めるんじゃない」
「“止まった状態を作る”」
意味が通らない。
「説明しろ」
ゼウスが言う。
ロキは笑う。
「簡単だよ」
「戦ってるように見せて、実際は止める」
ポセイドンが顔をしかめる。
「そんなことできるか」
「できるさ」
ロキは空間を指さす。
「領域を固定するんだろ?」
「その中で“動かさなきゃいい”」
アテナが思考を回す。
「……疑似戦闘状態の維持」
「そうそう」
ロキは軽く頷く。
「外から見れば戦争」
「中身は停止」
ハデスが言う。
「干渉条件を満たさない可能性がある」
ゼウスが目を細める。
「成立するか」
「試す価値はある」
アテナが即答する。
「少なくとも、完全停止よりは現実的です」
短い沈黙。
そして。
「やる」
決断は速い。
「全戦域に通達する」
ポセイドンが笑う。
「騙し合いかよ」
「戦争は元からそういうものだ」
ゼウスは淡々と答える。
その瞬間。
戦場の性質が変わる。
動きはある。
衝突もある。
だが。
“削られない”。
わずかな変化。
だが、確実な違い。
「……止まったか?」
ポセイドンが呟く。
アテナが確認する。
「発生頻度、低下」
「完全ではありませんが、有意な差があります」
ハデスが目を閉じる。
「効いている」
ゼウスは頷く。
「維持しろ」
だが。
完全ではない。
遠く。
わずかに、揺れている。
まだ、消えていない。
同時刻。
観測層:第3層対象:外部存在状態:干渉低下
条件変化を確認戦闘状態の変質により発生率低下
仮説更新:発生条件は「干渉の成立」ではなく「干渉の意思」
評価:停止していない適応している
観測は続く。
まだ、終わらない。
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