帰郷
アルディアに戻り、楽園を目指した。
王城にいる確率の方が高いが、楽園に行けば会える気がした。
そこに誰もいなくても、ダグラスが種を撒いてアンフィーサとヨゼフィンが育てた夏野菜の畑や向日葵をこの目で見たかった。
鏡越しではなく実際に見て、土を踏みしめて、風の匂いを嗅ぎたい。自由に憧れて置いてきた懐かしいものたちを。
楽園の入り口付近で馬車を下り、広々した草原を歩いて人口森に入り、泉で一休みしているとガサガサッという音がした。
この森に猛獣はいないはずだが、ドキリとした。
姿を見せたのはウサギだった。長い耳をピンと立たせ鼻先をひくひくさせている。泉の水を飲みに来たのだろうが、私を見て逃げて行った。
「悪いことしちゃったわね」
ウサギを見送って視線を移した先に、長細い人影があった。気配もなくそこにいたため、一瞬心臓が止まるかと思った。
「ア、アンフィーサ……!」
そうだ、アンフィーサとヨゼフィンは楽園の番人だ。結界内に人が侵入するといち早く察知して飛んでくる。
そのアンフィーサがここに来たということは……
「ヨゼフィンとダグラスも楽園に?」
アンフィーサはコクリと無言で頷いて、長い腕を私に向って伸ばした。荷物を持つというジェスチャーをした。
もう聖母でない私だ。無断で楽園に踏み入る資格がないと追い返される可能性も浮かんだが、アンフィーサは荷物を持って前へ進んだ。
「二人に会ってもいいのね?」
アンフィーサはまたコクリと頷いた。
長い道のりを二人で歩いた。風になびくアンフィーサの髪を、尖った形の大きな耳を視界に捉えながら、何を話そうか迷った。
アンフィーサは何も聞いてこない。言葉が話せないアンフィーサとヨゼフィンは、いつも黙ってただ寄り添ってくれていた。そのありがたみを改めて感じた。




