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最推し

 帰宅してからもハンナの言葉を何度も反芻した。


 ダグラスが私の最推し……。遠くから一目見るだけでも幸せと思えるなら、本物の想い……。


 そうなんだろうか?


 確かに受信鏡越しに見るダグラスに、なぜか癒されている自分がいる。

 毎日義務のように二人だけの通信をしていたときとは違い、ダグラの目に私は映っていないのに。

 国王として全国民へ向ける温かい眼差しに、明るい笑顔に、時おり披露するお茶目なマジックに、胸がほわっとしてしまう。


 特別な一人ではなく、大勢の中の一人になったからこそ、安心してダグラスを眺めていられるのだろう。これでいい。

 そう自分に言い聞かせた。配信を見るだけで十分だと。

 しかしその配信が十日を過ぎてもなかった。いつもなら十日に一度の頻度で、遅くても二週間以内には次の配信があるのに。

 きっと公務が忙しいのだろう。国王なのだ、暇ではない。


 三週間が過ぎ、不安になってきた。何かあったのだろうか。アルディア国内で何か起こったという話は耳にしていない。

 風邪でも引いたのだろうか。まさか重い病気じゃないわよね? 不安が募る。


 決まった事情でしばらく配信ができないのなら、せめて一言周知がほしい。いくら忙しくてもほんの数分くらい配信できないのか。などと聖母を降りた自分を棚上げして不満に思ったりもした。つまりとってもヤキモキしている。



「すみません。アルディアに帰郷したくて、エトさんの帰って来るタイミングで四、五日くらいお休みをいただけないでしょうか」


 もうすぐ大学が夏季休暇に入るので、アデルさんのお孫さんのエトさんが帰って来る。


「アイリーナちゃんもお国へ帰るんやね。ええよええよ。エトも大学の友達連れて戻る言うてたから、手が足りんかったら手伝ってもらうわ。ゆっくりしておいで」


「私もいるから任せて。気を付けて行ってらっしゃい」


 ハンナがドンと胸を叩いたあと、耳打ちした。


「例の最推しに会いに行くんでしょ。帰ったらお土産話聞かせてね」


「ありがとう。いい話かどうか分からないけど」


「いいのよ。行動することに意義があるんだから。自信を持って」


 ダグラスの無事を知りたくて会いに行く。逃げたくて逃げてきたのに。我ながら自分勝手だと思うけど、気になりすぎて夜も眠れない。

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