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推し変

 バイト上がり、久しぶりにハンナとご飯を食べに行くことになった。

 誘われたときに配信のことが頭をよぎったが、二日前に配信されたばかりなので今日は大丈夫だろう。


「そういえばリボル様の舞台、もうすぐ千秋楽でしょう。チケットは取れたの?」


「あっ」


 そういえばそうだった。多分もう売り切れただろう。


「取れなかった」


「そっかー、残念だね。次の公演地はサンビナシティだっけ。追っかけるの?」


 半年に一度は連休をもらって、レボル様の公演を追って小旅行というのが私の贅沢だ。

 しかしそれも今はまるで頭になかったということに気づいて、愕然とした。


「ねえ、本当にどうしちゃったの〜アイリーナ。あ、分かった。もしかして……推し変しちゃった?」


 推し変。推しの対象が変わることだ。


「そう……かも」


「えっ、誰誰? 同じ『イデニウス・ニェトイェ』の役者さん? 違う劇団?」


 ハンナが色めきたった。


「えっと、違うの。劇団員じゃなくて、母国の……有名人で、みんなの人気者なの」


「母国って、アルディアの? てことは前からずっと好きだったってことだよね。国を離れたから推しからも離れたけど、やっぱり最推しだって気付いたわけね」


 ハンナがうんうんと頷いて、同情めいた瞳を向けた。かと思うと、かっと目を見開いて私の手を手を取った。


「いいじゃん!」


「え?」


「別に遠くたって、会いに行けばいいじゃん。リボル様にだって会いに行けば会えるんだから、その最推しにも会いに行けば。遠くから一目見るだけでも幸せって思えるなら、それは本物の想いだよ」


 ぎゅっと手を握ってハンナが言った。


「ロズペタは私に任せて。長期休みの間はエトも来るし、アイリーナは帰郷して最推しに愛を伝えて来なよ。例え会えなくたっていいじゃん、行動を起こすだけで違うよ。やれるだけやったっていうのが大事なんだから」


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