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来訪者

 仕事が終わり、ハンナと近くのカフェへ行った。

 私を訪ねてきた男の特徴を聞く限り、やはりエリオスで間違いないと思った。黒目黒髪で彫刻のように整った顔。長身で小顔、手足が長くスタイルが良く、クールな雰囲気。

 どこかの王子様のようだったとハンナは言った。


「ねえ、アイリーナとはどういう関係? 元カレとか? またお店に来るかな?」


 ウキウキして尋ねるハンナを前にして、言葉に詰まった。

 エリオスと私はどういう関係なんだろう?

 聖母としてダグラスに頼まれ、魅了した側とされた側。ビジネスだったと言えばそうだし、それ以上のものがあったと言えばそうだ。


 楽園にエリオスが押しかけて来たから、今の私があるような気もする。大魔法使いシーラが現れたのは、エリオスの呪いの一件があったからだろう。


「うーん、友達かな。遠い国の人だし忙しくしてるから、また来るかどうかは分からないわ」


「そうなんだ〜、残念。あっ、それでこれが預かった物」


 ハンナがバッグから取り出したのは、手のひらサイズのポーチだった。


「ありがとう。何かしら」


 ポーチを開くと、ハンカチでくるまれたコンパクトミラーが出てきた。

 ただの手鏡ではない。これはアルディア王国の受信鏡だ。コンパクトケースに刻まれた印を目にして、ハッとした。しかもこれはアルディアの聖母の配信を受け取る用の、専用受信鏡だ。


「鏡か。そういや、『俺が持ってても意味がないから返す』って言ってたわ。鏡を置き忘れる関係なんて、怪し〜い。本当は元カレでしょう。振ったほうが物を返しに来たりしないだろうから、アイリーナが振ったの? 元カレ、いまだ未練ある感じじゃない? あんなにかっこいいのに振っちゃうなんて〜、なんかワケあり? 実は束縛暴力男とか?」


 ハンナが前のめりで聞いてきた。

 何でも話せる女友達ができて嬉しいと喜んでいたはずなのに、何でもは話せなかった。

 私がアルディアの聖母だったことをこの国の人々は知らない。


「ううん、本当にそういうんじゃないの。たまたまこっちに用事があって、たまたま思い出したんじゃないかな。私も忘れてたわ。この鏡が彼のところにあったこと、いま見て思い出した」


「そうなんだあ〜」


 がっかりしたように相槌を打ったハンナが、話題を変えてくれた。


「で、どうだった? 昨日のリボル様の舞台」


 よくぞ聞いてくれましたとばかりに、熱い感想を喋り倒すと、ハンナは面白がってウンウンと聞いてくれた。


「やっぱリボル様かあ〜、アイリーナのどタイプは。昨日の美形王子様はクール系で、系統が違うもんね」


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