推し活
「おはようございます。すみません、昨日はお休みをいただいて」
昨日は『推し』の舞台初日で、アデルさんとハンナに「行っておいで」と送り出されて休みをもらっていた。
「全然よ〜。ハンナちゃんがいるしね。推し活でリフレッシュしたかい?」
アデルさんが言った。私たちの会話に混ざり『推し』や『推し活』などの流行り言葉も使いこなしている。
私の『推し』は『イデニウス・ニェトイェ』という劇団に所属している舞台俳優、リボル・クルパーレク様だ。ナリィセイド国内を巡業し、各都市で一カ月ほどの公演をしている。
公演は朝夜の二部制なので、夜の部ならバイトを休まなくても良かったが、「絶対一番舞台がいいよ」とハンナに煽られ、チケットをいの一番に買って、ありがたく休ませてもらった。
「ありがとうね、ハンナ。舞台すっごく良かったよ。リボル様がね、軍服をばっと脱ぐシーンがあってね、なんとその下に何も着てなくて、バキバキの腹筋を目に焼きつけて参りましたあ!」
「うは、推しの腹筋はヨダレ。てか、それよりも、それよりもって言ったら悪いけど、私めちゃくちゃ気になってることがあるのよ。昨日、アイリーナを訪ねて来たのよ、すんごい美形男子が」
「え?」
「後で話すね。てか聞き出すからね。あの超絶美形男子との関係。昨日から気になりすぎて。アイリーナに渡してほしいって物も預かってるのよ。後で渡すね、とりあえず今は仕事ねっ」
そうだ、いつまでもくっちゃべってる場合じゃない。うんと答えて、お店前の通りの掃き掃除に出たが、ハンナの言葉が頭をグルグルしている。
私を訪ねてきた、超絶美形男子――と聞いて、思い当たる人物はいる。エリオス?
いや、それはないか。私に「渡してほしい物」を預かってるって、一体何だろう?




