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新生活

 


 ナリィセイドで暮らして半年が経った。あっという間だ。慣れない異国、慣れない自活生活。何もかもが新鮮だった。

 新生活を始めるにあたり、住む家や家具などは全てダグラスが手配してくれたが、住み始めてからの援助は固辞し、アルバイトをして細々と暮らしている。


 築二十年の賃貸アパートに住み、そこから徒歩で通えるパン屋さんでアルバイトをして、売れ残りや試作品のパンで食費を浮かせている。


「いやぁ、アイリーナちゃんが来てからすっかりこの店も見違えちゃったなあ。知る人ぞ知る隠れた名店が、日の当たるところに掘り出されちゃって」


 開店前の掃き掃除をしていると、常連のポールさんが犬の散歩で通りかかった。


「俺の友達がタウン情報誌のグルメ担当なんだけどさ、この店を取材したいって言ってたよ」


「そうなんですか!? ぜひお願いします!って言いたいところですけど、アデルさんに聞かないといけませんね」


「あの婆さん、露出嫌いだからなぁ。アイリーナちゃんから打診してみてよ。婆さんは別に表に出なくていいから、看板娘のアイリーナちゃんが受け答えしてくれれば」


「聞いてみます。今日もいつものパン、取り置きしときますね。あ、私が考案した新作パンもポールさんに食べてほしいです。感想お聞きしたいです」


「おっ、いいね。じゃあそれも追加で。もし余りそうだったら十個買うよ。職場に差し入れるから」


「ありがとうございます!」


 毎日の聖母配信で鍛えた愛嬌を発揮する。

 知る人ぞ知るパン屋『ローズペタルベーカリー』の店主アデルさんは接客が苦手だ。

 昨年まではお孫さんがお店を手伝っていたが、進学のため町を出て行き、アルバイト急募の張り紙を見た私が飛び込んできたのだ。


 アデルさんの焼くパンは絶品だが、売り出し方が惜しかった。お店の雰囲気を変え、パンの説明書きを作ったり、チョークで日替わり看板を描いたりと、好きなようにさせてもらえた結果、お客さんが増えた。

 私の工夫のおかげだとアデルさんは褒めてくれるが、元々パンが美味しいからだ。いくら見映えを良くして愛想を振る舞ったところで、パンが美味しくなければリピーターは来ない。

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