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移住

 ダグラスの親戚筋が移住している、ナリィセイドという国に住むことになった。

 小さな国だが平和的で気候が良く、ナリィセイドの公用語は私も話せる。アルディア人に友好的だが、アルディアの聖母について知る者はいない。ダグラスが私のために選んだ、第二の人生を歩み出すための国だ。


 楽園を去る前に、アルディア国民へ向けて最後の配信をした。

 私は区切りよく『引退』を宣言したかったが、あまりに急なことで受け取る側の気持ちが追い付かないだろうということで、『無期限休養』の形を取るようダグラスに説得された。


「もしそのまま君が戻って来なくても、期待と諦めを繰り返して、やがて折り合いをつけていくよ。急な引退発表では暴動が起きるかもしれんからな」


 ダグラスが言った。


「それに、君が戻ってくる余地を残しておきたい。新天地で新生活を始めたあとに、やはり楽園での生活のほうが良かったと思い直す可能性もゼロではないだろう。背水の陣など敷かなくて良い。駄目だと思ったらいつでも帰っておいで。そういう場所があれば気も楽だろう?」


「そう……かしら。待たれていると思うと、プレッシャーかも」


「そう思わなくていい。君はしたいようにすればいい。待ちはしないから」


 そういうやり取りのあとに最後の配信をして、『療養のための無期限休養』を発表した。病気だとうそぶくために弱っているふりをした。

 今まで散々『元気いっぱい天真爛漫な聖母アイリーナ』を演じてきたのに、最後の最後で笑顔を見せられないことは残念だった。


 配信はいつも一方通行で、聴き手の反応が見えず手応えを感じられないことが不満だったが、最後はそれに救われた。


 さようなら、聖母アイリーナ。私はただのアイリーナとして生まれ変わる。


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