それから
そうして、大魔法使いシーラの手にかかり私は持って生まれた厄災級の魅了を失った。
シーラの言った通り、肉体的な変化はなかった。見た目は変わらず、精神的にも劇的な変化はない。
ダグラスとエリオスが急に冷たくなることもなかった。エリオスはとりあえず自国へ帰ったが、ダグラスは「心配だから」と公務の合間を縫って楽園へ毎日やって来る。
そう、楽園からすぐに追い出されるということもなかった。
「だってさ、あまりに何も変わらないから。本当に君の魅了が無くなったのか信じられないよ。あの魔女に一杯食わされたんじゃないのかな。君は一刻でも早く楽園を出て自由を謳歌したいようだが、本当に大丈夫かどうか、きちんと確かめてからにしよう」
ダグラスの提案で、私の魅了が本当に無くなったのかどうか確かめることにした。
自国アルディアでは聖母の私はあまりに有名なため、エリオスに協力を仰いだ。
エクリシア帝国から、私のことを全く知らない者を数名招き、ダグラスが用意した別荘で数日を共に過ごすという試みだ。
もちろん私の素性は伏せ、エリオスやダグラスの介入も知らせない。王子や国王が関わっていると知れば、私個人の魅力など関係なくなるからだ。
「このテストにクリアすれば、聖母を引退して、楽園を出て行ってもいいのね?」
ダグラスに念を押した。
「ああ……約束だからね。いいよ。でも私は君にいてほしい。アイリーナ、愛してる。今の君に魅了がないことが証明できれば、私の愛が魅了に影響されない、揺るぎない本物だと証明できるよな」
私を手放すと約束しながらも、すがるように愛を口にするダグラスに薄く微笑んだ。
「きっともう少し我慢すれば、お互いに楽になるわ。今はまだ強力な魅了が後を引いているのよ。毒の後遺症のようなものよ」
自分に言い聞かせるように言った。
年を取り魅了が弱まり、ダグラスに愛されなくなること。それが一番怖かった。狂信的に「愛してる」と言われ続けて苦しんだというのに。その甘やかな毒は私を蝕み、いつか失うことへの恐怖に押し潰されそうだった。
「スッキリ手放して、お互いに新しいスタートを切りましょう」




