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究極の二択

 すたり、と空から下り立ったのは知らない女だった。オレンジがかった金髪に翡翠色の瞳。溌剌とした表情はまるで少女のようだが、落ち着き払った様子は老成して見える。

 手にはくねくねした大きな杖。年齢不詳の美女だ。


 楽園への侵入者に敏感なヨゼフィンとアンフィーサが察知する暇もなく、いきなり目の前に現れたのだ。

 意表を突かれた二人が即座に攻撃体勢に入ろうとしたが、


「大魔法使いシーラ!」


 エリオスの上げた声に一同さらに意表を突かれた。


「エクリシア帝国の麗しき王子様、名前を覚えておいでとは光栄ですわ」


 こ、この人が例の魔法使い? エリオスに呪いをかけた恐るべき魔女。身構える私たちを後ろで庇うようにして、エリオスがシーラに詰め寄った。


「何をしに来た?」


「そう警戒しないでくださいな。ちょっとご挨拶に。あなたの呪いを解いた、そちらのお嬢さんに興味があってね」


 わたし?


「強すぎる魅了の力で生きづらいのね。私ならその力を奪い去ることができるわ。どうする?」


 エリオスから私に視線を移した大魔法使いシーラが、お茶でも飲まない?というような気安さで尋ねた。


 どうする? えっ、私から魅了を奪い去るって、本当にそんなことが?


「そんなこと、できるんですか?」


「ええ。この魔法の杖と私の魔力があればね。お困りなんでしょう、助けてあげるわ」


 飄々と答えたシーラに食ってかかったのはエリオスだ。


「信用できぬぞ。気まぐれに私に死の呪いをかけた魔女の言葉など。何かの罠だろう」


「あら、心外ですわ。王子様の国も助けて差し上げたのに。下々の者の命を虫けらように斬り捨てていた冷酷な王子も、命と愛の尊さを知り変わったのでしょう。私のお陰だと感謝してほしいわ。それもこれも人助けよ」


 エリオスはぐっと息をのんだ。下々の者の命を虫けらのように斬り捨てていたという指摘に心当たりがあるのだろう。


「アイリーナの魅了の力を弱めることができるんですか?」


 二人の会話にダグラスが割り入った。


「薄める、いいえ。奪い去ると言ったのよ」


「全て奪わずに、良い加減に残してもらえませんか。アイリーナらしい魅力を失わず、それでいて生きづらくない程度に」


「そんなにご都合の良い調整なんてできないわ。全部奪うか、奪わないか。それだけ。嫌ならいいのよ、別に。無理やり強奪する気はないの」

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