愛で狂う
「無理だ。アイリーナのそばにいて、おかしくならない男はいない。一緒にいるだけでいい、他に何も望まない。そんな殊勝な気持ちでいられるのも最初だけだ。君だってすぐにそうなる。アイリーナの全てが欲しくなって、それが叶わずにいっそ壊したくなるのさ。何もかも放り出してここへ来ている時点で、君はすでに狂っている」
怒りを孕んだダグラスの言葉にエリオスはじっと耳を傾けたあと、
「陛下のように?」
と尋ねた。
「ああ、私はすでに狂っている。その自覚があるからこそ、アイリーナと離れ、手を伸ばしても届かない環境で自制している。自覚のない者は怖い。自分だけは例外で大丈夫、なぜそう思える。思い上がりも甚だしいな」
「それでも私は陛下とは違います。誓います、決してアイリーナを害さないと。アイリーナの望まないことはしない。血の誓約を交わしましょう。もし私が誓いを破り、アイリーナに何かしようとした場合は、殺してくださって構いません。その優秀な護衛の使い魔に、そう命じてください」
「命をも懸けると?」
厳しい顔で言って、息を吐くようにふはっとダグラスは笑った。
「君が死ぬ未来が見えるよ」
「いえ、アイリーナと共に生き続けます」
「そこまで言うなら見せてもらおうか。君がどこまで『持つ』のか。共に暮らし、あらゆるものを共有してなお、決して君のものにはならない女を永遠に愛せるのかを。私は日々通信鏡で、君たちの営みを見せてもらおう」
憎悪に満ちた瞳に、愉悦が浮かんだ。
ああ、ダグラスの悪い癖だ。私に近づく者を嫌悪して気が狂いそうなほど嫉妬すると言うくせに、どこかでそれを愉しんでいる。苦しみ、自身を痛めつけることで、愛を確認しようとしている。
「ということは、ここで暮らすご許可をいただけるんですね?」
エリオスは落ち着き払った様子で確認した。
「本当に良いんですね?」
即答しないダグラスから視線を移したエリオスは私を見た。
「アイリーナもそれで良いか?」




