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上書き

 ベッドに身を横たえ医者を待っている私の頬に手を添わせ、ダグラスは顔を寄せた。

 懐かしい香りに目を閉じると、ふわりと柔らかい感触が唇を覆った。


「上書きさせてもらったよ。できることなら今すぐ全部、他の男の痕跡を塗り潰したいが」


 そう言って再びキスをした。荒々しい言葉のわりには、ゆっくりと慎重な動きで舌が侵入してくる。頬に添わせていた手が下がり、私の首筋を撫でた。熱を帯びてきたその手が、ぱっと離された。


「ごめん、こんなときに」


 まだちゃんと自制が効いているらしいダグラスがやっぱり憎らしい。


 部屋の隅ではヨゼフィンが置き物のようにじっと立っている。

 ヨゼフィンとアンフィーサが『暗殺スキルに特化した』使い魔であると先程ダグラスが言っていたが、初耳だ。

 なるほど、どうりでと納得した。


 細くてスマートな身のこなし、手先が器用で気配を感じさせない。物音に敏感な尖った耳と、目線が分かりにくい黒目がちなつぶらな瞳。喋ることができないのも、大事な情報を漏らす心配がないという点で暗殺者向きだ。


「ダグラス、会えて嬉しいわ」


 見上げて言った。本心からの言葉を。ダグラスは軽く目をみはり、複雑な表情をして笑った。私も嬉しいよと大袈裟な演技で返されるとばかり思っていたら。


 部屋のドアがノックされ、目隠しされた医者とアンフィーサが入って来た。

 ダグラスは顔つきを変え、権力者らしい声色で医者に用件を伝えた。


「――というわけで、こちらのレディの診察をお願いする。診察に必要な範囲でのみ、見てくれ。余計な興味を持たないのが貴方の身のためだ。診察料は上乗せしよう。ヨゼフィン、君は物置部屋の見張りに行ってくれ」


 ヨゼフィンが部屋を出て行くと、医者の目隠しが取られた。


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