証明
エリオスはおもむろに左手の手袋を脱いだ。普段の白手袋ではなく、黒い革の手袋だ。
その下から現れた肌の白さに目をみはった。
「痣が」
「ああ、綺麗になくなった。君のお陰だ」
「良かった、治ったのね」
「わざわざそれを見せに? 手紙なり通信なりで、私にご報告いただければ済む話でしょう」
ダグラスが苛立ちを隠さずに言った。
エリオスはダグラスには目もくれず、私を真っ直ぐに見つめて言葉を続けた。
「これで証明できた。俺が、心から本当に君を愛していると。遠く離れていても、君を大切に想い続けることで、愛を証明できた。無理やり手に入れて、ぶち壊すことだけが愛じゃない」
本当の愛とは、何もかも手に入れてめちゃくちゃに壊したくなるものだと私が言ったからだ。そうではないと証明して、それを見せるためにわざわざやって来たと?
「愛とは随分独りよがりだな。とにかく今はアイリーナを医者に見せるのが先でしょう。王子はここで待っている間、少し頭を冷やされてはどうかな」
医者に渡す手紙を書きながら、ダグラスが言った。
「ヨゼフィンが戻ったら、アイリーナを連れて出ます。ヨゼフィンとアンフィーサは暗殺スキルに特化した使い魔ですので接待は苦手ですが、ここで一緒にお待ちください」
「お待ちください。馬での移動は良くありません。振動は脳に響きます。なるべく体を動かさず、ここへ医者を呼ぶのが良いでしょう。目隠しした医者を連れて来て、入念に口止めを」
書く手を止めたダグラスが、エリオスを睨み上げた。
「……そうですね、そうしましょう。では診察が終わるまで、あなた方は別室でお待ちください」
そう言ってエリオスとブルーナを物置部屋へ押し込めると、ダグラスは深いため息を吐いた。
「まったく、何なんだ、あの王子は。いかれてる。愛の証明だ? 押しつけがましいヤツだな。あれだ、魅了のせいだ。魅了でおかしくなってるんだ。まあ、君にとっては良くあることか。それにしても本当に美しい男だな。私の目の前で君といちゃつくなんて、殺してやりたいな。ゾクゾクしたよ」




