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侵入者

 アンフィーサに鋏を渡し、ヨゼフィンが霧状化していく。砂糖菓子がほろほろと崩れるようにして、体の一部から少しずつ霧になっていくのだ。

 霧散することで長距離を素早く移動できる。宅配人が荷物を届けに来たのだろう。


 アンフィーサが私を館の中に誘導し、ヨゼフィンがなるべく館から離れた場所で訪問者を迎える。私の安全を守るために、この楽園を維持するために、二人がいつもしていることだ。


 しかし今日は様子が違った。緊迫した雰囲気で薔薇園からの移動を促すアンフィーサが、もう待ってられないというように私を抱え上げた。


「えっ、なにっ」


 びっくりして問いかけるも返事はない。何かしらの異変が起きているらしい。


 視界の端に黒い影が横切った。旋風が飛び込んできたのだ。巻き起こる風から私を守るようにしてアンフィーサが覆い被さった。

 風が収まると、アンフィーサは私を地面に下ろしてすかさず反撃態勢を取った。腰に携えている短剣を抜き、危険から距離を取るべく鋭い蹴りを繰り出した。


 ばっと後ろに飛び退いてアンフィーサの蹴りをかわした者がいた。その姿を見て、驚きのあまり声を上げた。


「エリオス!?」


 本当にエリオス? 黒髪は肩まで伸び、身体つきも筋肉隆々だ。一回り大きくなったように見える。繊細な芸術品のように美しく整った顔にも荒々しさが宿っている。私の知っているエリオスではない。

 なのにエリオスだと分かった。


「アイリーナ」


 と私の呼びかけに応じた声が、確かにエリオスだったからだ。


「アンフィーサ、ストップ、止めて。この人、エクリシア帝国の王子よ」


 慌てて止めるも、アンフィーサは攻撃の手を緩めなかった。不用意に楽園に侵入し、私に近づく者は排除せよと命じられているからだ。


「アイリーナにっ、話が、あって来た。話だけっ、させてくれ」


 攻撃をかわしながら切れ切れにエリオスが言った。武器を持つアンフィーサに対して、エリオスは丸腰だ。刺されてしまうのではないかとハラハラしたが、筋肉隆々のエリオスは上手く攻撃を受け流している。

 短剣を握るアンフィーサの手をパシッと握って止めた。アンフィーサが蹴りで反撃する。


「にゃっ、にゃっ、にゃっ〜!!」


 大きな叫び声を上げながら、大きなモフモフしたものがこちらへ向かって走って来る。

 あれはブルーナ!?

 なりふり構わずに四つん這いで駆けてくるブルーナの後ろを追ってくるのはヨゼフィンだ。


「殿下っ、無理にゃ、こんな化け物っ、私に足止めできるわけっ、にゃっ!」


 ヨゼフィンの伸びるパンチをジャンプでよけて、勢い余ったブルーナが猛スピードで飛び込んできた。


「ブルーナ!」


 両手を広げて受け止めたが、ブルーナごと倒れてしまった。


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