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新たな苦しみ

「エリオス殿下」


 見計らったようなタイミングで、ラウリとルトヘルが現れた。相変わらず美しいが、どちらも険しい表情を浮かべている。


「後は我々にお任せください」


「アイリーナ様を必ずアルディア王国へお返しする、ということを最優先いたします。ご容赦ください」


 はっとしたように二人を見たエリオスが、深く息を吐いた。


「そうだったな。私がアイリーナを愛するあまり国へ返さないと言い出した場合は、お前たちに歯止めになってもらうと決めていた」


「はい。冷静な殿下が非現実的なことを夢見ておられます。それほどアイリーナ様に心惑わされておられる。私たちの望んだ結果です」


「殿下、お別れのご挨拶を。私たちは殿下と戦ってでも、任務を遂行します」


 エリオスと対峙した二人がキッパリとした口調で言った。私のほうは一瞥もしない。

 私に向き直ったエリオスが、切ない瞳で見つめた。


「アイリーナ、愛している。私に愛させてくれてありがとう」


「エリオス、私も愛しているわ」


 口先だけの愛してるを述べて、別れのキスをした。まるで呪いをかけるように。

 魔女の呪いに打ち勝つには、新たな呪いをかけるしかない。「ようこそ新たな苦しみへ」と言ったダグラスの声が脳裏をよぎった。


 私たちはなんて残酷なんだろう。


 成就しない愛に永遠に苦しむだろうか。それでも死んでしまうよりはマシだ。生きていてほしいと望むのは私のエゴだろうか。


「生きてね。死なないでね。例え会えなくても、エリオスが元気でこの国で王子をやってると思うだけで、嬉しいから。来て良かったわ」


「ああ。俺も。会えて良かった。遠く離れていても、アイリーナがそう思ってくれていると思えば、救われる」


 その言葉に救われる。悪魔のような女だと非難されるべき聖母に、ありったけの切なさと愛しさをこめた瞳で赦しを与えてくれる王子様は、哀れで愛しい。

 哀れで愛しい、ダグラスを彷彿とさせた。


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