支離滅裂
真剣な顔で頷くエリオスに再び苦笑が漏れた。
「支離滅裂ね。早く帰れと言ったと思ったら、もっといてほしいの? どっちなの?」
挑むように見た。未熟な愛のまま手放すと宣言しておいて、舌の根が乾かないうちにそれを翻すエリオスが滑稽に見えた。
愛が着々と進行している。理性を侵食して冷静さを欠き、矛盾だらけの言動に自ら振り回される。他の男たちのようにはなりたくないと言ったエリオスも、やはり例外ではなかったのだ。
「……いてほしい。ダグラス王のところへ帰したくない。だが君はダグラス王とアルディア国民を愛していて、楽園へ帰りたがっている。そう分かっているが、もしそうではなかったら……もし君が楽園へ帰りたくないなら、自由に出歩ける暮らしを望むなら、それを叶えよう」
自由に出歩ける暮らし。
人がいる場所に住み、生身の人間と対面で会話をし、街並みを散策して、公園で昼食を取ったり観光名所を巡ったりする。楽しいだろうな。
「最大限の配慮」をしてもらって、そんな暮らしを手に入れることが本当に実現可能なのか――考えるまでもなかった。
「できないわ。エクリシアに滞在できるのは最大一ヶ月と決まっているもの。ダグラスとの約束よ。借りた聖母を返さないなんて、国際問題になるわ。アルディアに帰る、以外の選択肢は無いの。残念ながら」
「帰りたくても帰れない状況なら? 不慮の事故で死んでしまうとか」
冗談でもなく、真剣な瞳で不吉なことを言うエリオスに息を飲んだ。
「死んだことにすればいい。アルディアの聖母アイリーナを捨てて、新しい人間に生まれ変わり、新たな人生を歩み直せばいい。ここでは君を知る者はほとんどいないし、魅了にかかる人間が出ないように気をつければいい。もし万一、君に危害を及ぼしそうな者が現れたら、いや、そうなる前に危険な芽は早急に摘む。俺が全て排除する。君は何も心配いらない。配信もしなくていい。好きなことをして過ごせばいい」




