神代封呪録・第五章 試練 第一節 百鬼夜行 第十七話 総理大臣
神代封呪録・第五章 試練 第一節 百鬼夜行 第十七話 総理大臣
秘書の池田は、神代蒼真を防衛大臣の執務室へ案内した。
テレビで何度も見たことのある、あの執務室だった。
「神代大臣、凄いですね……」
三輪が、部屋を見渡しながら呟いた。
「あぁ……私も驚いている」
蒼真も、室内を見渡した。
ここから、日本が変わるのかもしれない。
蒼真は、自分の椅子にゆっくりと腰を下ろした。
今まで座ったことのない、重みのある椅子だった。
不思議だった。
ずっと座っていたい。
そんな気持ちになった。
池田は腕時計を確認すると、静かに告げた。
「そろそろ、総理大臣との打ち合わせです」
「あぁ……分かった」
蒼真は立ち上がり、ネクタイを真っ直ぐに直そうとした。
しかし、少し歪んでいた。
「失礼します」
池田が蒼真のネクタイを手早く直した。
「神代大臣、大丈夫ですよ」
池田が微笑む。
「よし、行こう」
三輪の運転する車で首相官邸へ向かう。
官邸に到着すると、蒼真は池田とともに総理大臣の執務室へ向かった。
池田がドアをノックする。
「どうぞ」
中から声が聞こえた。
「失礼します」
蒼真たちは執務室へ入った。
「おぉ……よく来てくれた。歓迎するよ。さぁ、座ってくれ」
総理がソファを指した。
「失礼します」
蒼真はソファに腰を下ろした。
「実感は湧いてきたかな?」
総理は笑いながら尋ねた。
「はい。少しずつ慣れてきました」
「あはは……慌てることはない。いきなり大臣だからね。ゆっくりでいい」
総理は穏やかな笑顔を浮かべた。
「では、ストレートに聞こう」
総理の表情が、少しだけ真剣になる。
「妖への対応について、日本は海外より遅れているとは思わないかい?」
「……」
「例えば、UFOやUMAなどについて、アメリカではペンタゴンが公式に情報を公開している」
総理は一度、言葉を切った。
「私は、テレビを見るまで悪路王なんて知らなかったよ。そして、その悪路王に立ち向かう神代大臣の姿を見た。正直、驚いたよ」
総理は蒼真を真っ直ぐに見つめた。
「私は、妖の存在を国民に隠すのではなく、公開していった方が良いと思っている」
そして、静かに問い掛けた。
「神代大臣は、どう思う?」
蒼真は少し考えてから、答えた。
「妖には、悪い妖もいれば、良い妖もいます」
そして、総理を真っ直ぐに見返した。
「私は、もっと良い妖が住めるような日本にしていきたいと考えています」
「神代大臣……期待しているよ」
「はい。頑張ります!」
蒼真は笑顔で答えた。
第十七話 了




